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JAWS-UG東京 ランチタイムLT会 #20 レポート
公開
2025-03-30
更新
2025-03-30
文章量
約3525字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
2025年2月20日、JAWS-UG東京が主催する「ランチタイムLT会 #20」がオンラインで開催されました。今回は「AWS関連なら何でもOK」のライトニングトーク(LT)会ということで、AWSサービスを活用した事例や学習の手応えをシェアし合える充実した一時間となりました。ランチを挟みながら参加できる気軽さもあり、初心者からベテランまで幅広い方々が集まったのが印象的です。
本レポートでは、イベント前半のオープニングから各登壇者の発表内容、そして最後に全体を踏まえた感想までをまとめました。オンラインとはいえ、画面越しに登壇者の熱量が伝わってくる、活気ある会だったのがとても印象的でした。
1. ETLサービス AWS Glue DataBrewを使ってみた
登壇者:宮前 隆平(PwCコンサルティング合同会社)
ETL(Extract, Transform, Load)サービスの一つであるAWS Glue DataBrewを実際に使ってみた感想と、類似サービス(AWS Glue Studioなど)との比較が語られました。ポイントは以下のとおりです。
ノーコードの操作感 直感的なUI上でデータの前処理ができるのが最大のメリット。画面でレシピ(変換ルール)を定義すると、同様の処理を他のデータセットにも簡単に再利用できる。
プロファイリング機能 データを取り込んだ際に品質をチェックしやすく、欠損値や分布状況などをビジュアルで確認できるのが便利。
AWS Glue Studioとの違い テラバイト級の大容量データでもノーコードでのETLができる一方、コード(PySparkなど)に落として高度な拡張をしたい場合はStudioのほうが自由度が高い。
実際の業務でクラウドのデータ分析基盤を組むとき、ETLフェーズのノウハウはとても重要になります。今回の発表で、DataBrewの導入メリットや注意すべき点、サービス選定のヒントが具体的に示されたのが印象的でした。
2. ネットワーク初心者がTransitGatewayを使ってみた感想
登壇者:濱口 莉生(クラウドセントリック株式会社)
ネットワーク初心者がAWS Transit Gatewayを触ってみた際のハマりどころと、解決のポイントについての発表でした。
異なるAZ間での通信とアプライアンスモード 通常はVPC同士をつなぐだけであればルート設定のみでOKだが、Firewallなど検査用のVPCを経由した場合、送信経路と受信経路が一致しないとパケットがドロップされる。そのためにアプライアンスモード(Appliance Mode)を有効化する必要がある。
デフォルトアソシエーションとプロパゲーション 複数のVPC間でルートを伝搬させるとき、Transit Gatewayの機能をうまく使うと設定が大幅に楽になる。
検証方法 AWSのVPC Reachability Analyzerは単方向の経路確認には便利だが、アプライアンスモードの双方向通信を検証するにはpingなどを用いるほうが確実。
ネットワーク構成は比較的とっつきにくく、特にTransit Gatewayのようなサービスは全体像やAZをまたぐトラフィックフローを理解するのが難しいものです。初心者目線でのハマりどころ共有は非常に参考になりました。
3. CloudWatchメトリクス極めてみた
登壇者:上林 麻衣(ARアドバンストテクノロジ株式会社)
AWSの監視基盤として広く使われているAmazon CloudWatchですが、いざ使いこなすとなると意外と奥が深いもの。今回は「メトリクス」に焦点を当てた解説でした。
メトリクスの期間設定と粒度 1分間隔でのデータは15カ月まで保存可能だが、1秒間隔の高解像度メトリクスは別途有効化が必要。また、古い期間の詳細粒度は保持期限が短いため要注意。
ウィジットの使い分け 折れ線グラフ、数値表示、データテーブルなどクラウドウォッチのダッシュボードは複数のウィジット形式が選択可能。シーンに合わせて使い分けると監視効率が上がる。
調査視点の共有 障害時やボトルネック調査のとき、どのメトリクスをどう見ればヒントが得られるかを実例ベースで紹介。 例)CPU使用率の平均・最大や、コンテナ別のメトリクスなどを数値ウィジットで可視化することで、一目で稼働状態を把握できる。
どのプロジェクトでも、運用保守フェーズでCloudWatchはほぼ必須となりますが、「どう使ったらいいか分からない」という声は少なくありません。ウィジットの具体例や、粒度・保持期間の設定上のコツがまとまっており、すぐにでも活用できそうな内容でした。
4. Terragrunt使ってみた
登壇者:kohekohe(e-dash株式会社)
最後はInfrastructure as Codeツールの一つ、Terragruntの導入事例です。Terraformをラップする形で生産性を高めてくれるTerragruntですが、実際に使ってみて感じたメリットが語られました。
複数環境管理が容易 Terraformでよくあるのが、環境別のディレクトリを作成して同じようなファイルをコピペしがち…という問題。Terragruntでは親子関係の設定ファイル(HCL)を継承して再利用できるため、更新の抜け漏れが減る。
ステートファイルの分割がしやすい 規模が大きいインフラだとモジュールごとにステートを分割したほうが安全だが、Terraformではやや面倒。Terragruntはディレクトリ構造が整備されていれば自動的にステートを分割してくれるので、運用負荷が軽減される。
S3バケットの自動作成 テラフォームのstateを格納するS3バケットを手動で作る手間が省けるなど、細かい便利機能もある。
Terraformも進化しており、モジュール化やベストプラクティスの蓄積は進んでいるものの、大規模プロジェクトの運用ではステート管理の煩雑さが残るとの声は根強いです。テラフォーム運用を一歩先に進める選択肢としてTerragruntを導入するのは大いにアリだと感じました。
まとめと感想
どのLTもAWSの実践的な話が詰まっており、特に以下のような点が心に残りました。
AWS Glue DataBrewでのノーコードETL データ分析の入り口を手軽にし、レシピ機能で前処理を素早く再利用できる点が魅力。スタジオとの住み分けも整理されており、今後導入検討する方にも良い指針となりそうです。
Transit Gatewayの検証と落とし穴 ネットワーク構築の初心者が直面しがちな「AZをまたいだ通信ルート」。使いこなすと強力ですが、ハマりどころが多いことを改めて認識しました。アプライアンスモードの存在は意外と忘れられがちなので必見です。
CloudWatchメトリクスの使いこなし “なんとなく”で眺めがちなダッシュボードにこそ、使いこなしのポイントが沢山あることが分かりました。統計の粒度やウィジットの種類を意識すれば、監視の精度や障害調査のスピードが大きく向上しそうです。
Terragruntで進化するIaC運用 Terraformをさらに使いやすくするラッパーとしてのTerragruntの価値が、事例を交え具体的に語られていました。複雑な環境を管理する際に、いかにコストを抑えながら運用するかは多くのチームが抱える課題です。今後さらに注目が集まりそうだと感じました。
オンライン開催のため、リアル会場の熱量とは少し異なりますが、発表中もTwitter上では質問や感想が次々と投稿されており、双方向コミュニケーションもしっかり成立していました。運営メンバーが気さくに声をかけてくれるおかげで、初参加者も臆せず質問やコメントができていた様子です。
JAWS-UG東京 ランチタイムLT会は毎月開催されていますので、興味を持った方はぜひ次回以降もチェックしてみてはいかがでしょうか。各回、初心者から上級者まで幅広いレベル感でAWSの知見を交換できるのが何よりの魅力です。オフライン会とのハイブリッド企画や、今回のようなオンライン特化のLT会など、多彩な形でコミュニティが盛り上がり続けているのはまさにJAWS-UGの強みですね。
AWSサービスは日々進化し、学ぶべき領域は膨大ですが、こうしたコミュニティイベントでチャレンジや成功談を共有することで、その学習効率やモチベーションは何倍にも上がるはずです。今回のレポートが、皆さんの日々の学びや業務へのヒントになれば幸いです。次回のランチタイムLT会も楽しみにしています。
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