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「Bedrock Night オンライン 〜AWSで生成AIアプリ開発! 最新ナレッジ共有〜」イベントレポート
公開
2025-03-30
更新
2025-03-30
文章量
約5550字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
イベントの全体像
オープニング
LT1:「Amazon Bedrock 直近アップデート! Claude 3.7 + Nova、Session Management を中心に」
LT2:「Amazon Bedrock Knowledge basesにLangfuse導入してみた」
LT3 :「Dify で AWS を使い倒す!」
LT4 :「LangGraph × Bedrock による複数の Agentic Workflow を利用した Supervisor 型のマルチエージェントの実現」
LT5 :「OSS実装を参考にBedrockエージェントを作る!」
LT6:「Bedrock Converse APIでTool useのJSONモードを使って"クエリ拡張"と"クエリ分解"を試してみた」
Bedrockウルトラクイズ
Bedrockのお悩み相談ディスカッション
クロージング
全体を踏まえた感想
2025年3月10日の夜、「AWSで生成AIアプリ開発」をキーワードにしたオンライン勉強会「Bedrock Night オンライン 〜AWSで生成AIアプリ開発! 最新ナレッジ共有〜」が開催されました。
AWSユーザーグループ(JAWS-UG)東京支部が主催し、日本各地のエンジニアがZoom/YouTubeを通じて視聴。Amazon Bedrockの新機能や、OSSツールとの組み合わせ事例が多数紹介される、非常に濃密なセッションとなりました。
イベントの全体像
当日は19時から開始し、オープニングのあと、6本のライトニングトーク(LT)が続きました。テーマはAWSの生成AIサービス「Amazon Bedrock」 をどう使いこなすか。登壇者それぞれが最新のナレッジや活用事例を披露し、参加者からも多数の質問が寄せられる盛り上がりぶりでした。
さらに後半には「Bedrockウルトラクイズ」での知識試しや、「Bedrockのお悩み相談ディスカッション」でのフィードバック交換が行われ、3時間弱の勉強会とは思えないほど情報量が多かったのが印象的です。
以下、LTの内容を中心にダイジェストをお伝えします。
オープニング
冒頭では運営の「みのるん」さん(JAWS-UG東京支部・KDDIアジャイル開発センター)が登壇し、Bedrock Nightの狙いを解説しました。 Amazon Bedrock はAWSが提供する生成AIプラットフォーム。各種LLM(大規模言語モデル)をサーバーレスで活用でき、最近ではモデルや付随機能のアップデートが目まぐるしいことから、「みんなで最新事例をキャッチアップしよう!」というのが本イベントの趣旨です。 オープニングではBedrockの基礎が1分でおさらいされ、「LLMアプリを構築するうえで、Bedrockコンソールだけでも試せる」「GUI比較モードが便利」「クロスリージョン利用に注意」などのポイントが手短に紹介。参加者の期待を一気に高める滑り出しとなりました。
LT1:「Amazon Bedrock 直近アップデート! Claude 3.7 + Nova、Session Management を中心に」
登壇者: 久保 隆宏(アマゾンウェブサービスジャパン)
1本目はAWSの機械学習Developer Relationsを務める久保さんから、Bedrockの最新アップデートまとめが披露されました。
Claude 3.7: Anthropicの最新モデル。リーズニング性能向上や「Extended Thinking」モードが追加された話題
Amazon Q Developer CLI: Python的にスクリプトを書けるCLIで、Claude 3.7に対応。サーバーサイドの作業を自動生成する体験が強力
Session Management API: BedrockのAgenticワークフローなどにおける状態管理が強化され、LangGraphとの親和性も高まっている
前回のBedrock NightでのフィードバックがAWS本社にも共有され、改善のスピードが上がっているとのエピソードも興味深いところ。 「バージョンアップごとに使い勝手が大きく進化しているので、機械学習活用のハードルがさらに下がる」と締めくくられました。
LT2:「Amazon Bedrock Knowledge basesにLangfuse導入してみた」
登壇者: そのだ(株式会社Fusic)
続いて、株式会社FusicのそのださんはBedrockのナレッジベース機能×Langfuseによるログ監視について解説。 Bedrockナレッジベースを使えば、RAG(Retriever-augmented generation)がサーバーレスで簡単に実装できます。しかし細かいログを取り回すには、CloudWatchやメトリクスを個別に確認しなければならず、面倒な面もあるとのこと。 そこでLangfuseというオープンソースのログ観測ツールを連携し、トークン使用量やレイテンシを一括管理してみたという事例を紹介しました。ナレッジベースのリトリーブ&ジェネレートAPIやリトリーブAPIを分割して監視すると、どのAPIに時間がかかっているか可視化しやすいとのこと。 最終的にはEKSや独自のエンドポイントでナレッジベースを扱うパターンだとLangfuseで統合監視しやすいが、簡易に導入するならリトリーブジェネレートAPIでのトレースが最初の一歩とまとめていました。
LT3 :「Dify で AWS を使い倒す!」
登壇者: 森田 力(クラスメソッド株式会社)
3番手は、クラスメソッドの森田さんによるDify活用事例。 Difyはオープンソースのノーコード生成AIアプリプラットフォームで、簡単にチャットボットやワークフローを構築できる。ただしDifyの標準ホスティング(Dify Cloud)は機能制限があるため、大規模に使いたい場合にはAWS上でセルフホスティングする方法が有効とのこと。 さらにECSやEKSなどのパターンを細かく検討。プロダクション利用時に必要なガバナンス(例えばログ収集やガードレール導入など)もAWSのセキュリティ基盤に乗せれば解決しやすいといいます。 「Dify × Amazon Bedrock」は、エンタープライズでも柔軟にカスタマイズできる好相性とまとめられました。ノーコードでエージェント構築を素早く試したいユーザーに向けて、とても参考になる内容でした。
LT4 :「LangGraph × Bedrock による複数の Agentic Workflow を利用した Supervisor 型のマルチエージェントの実現」
登壇者: 鯨田 連也(NTTデータ)
NTTデータの鯨田さんは、**「Supervisor型マルチエージェント」**という先進的なアーキテクチャをデモ。
複数のエージェンティックワークフロー(タスク)を持つサブエージェント
それらを統括し、状況に応じて切り替えるスーパーバイザーエージェント
LangGraphによるワークフロー定義とインテグレーション という構成で、生成AIによる複雑な代理応答を仕組み化したとのこと。 鯨田さんは「ワークフローは決定的な実行順序を保証できるが柔軟性に欠け、エージェントは逆に柔軟だが制御が難しい。その両者の良い部分を組み合わせるにはSupervisor型が有効」と述べました。 実際にはチャットで指示を受けると、コンポーズ系のフローと画像生成系のフローを連携させて適切に呼び分けるタスク管理をLangGraph上で行うとのこと。プロダクトにおける「柔軟かつ破綻しにくいAIアプリ」の構築手法として非常に注目度が高い発表でした。
LT5 :「OSS実装を参考にBedrockエージェントを作る!」
登壇者: moritalous(個人)
5番手の森田さん(2人目の森田さん)は、インラインエージェントとリターンコントロールの組み合わせによるローカル開発例を紹介。 ベッドロックエージェントは本来、事前に「アクショングループ」や「インストラクション」をビルドしてデプロイするが、インラインエージェントなら1回のAPI呼び出しで動的に定義できる。 さらに「リターンコントロール」モードを活用すれば、ツール実行をローカルの関数呼び出しに落とし込み可能。つまり、AWS Lambdaをわざわざデプロイしなくても、ローカルでエージェントの動作を試せる、という魅力的なアイデアが語られました。 インストラクション作成にはOSS「Crew AI」の実装を参考にしてロール、ゴール、バックストーリー、タスクなどを一括でプロンプト化するアプローチを採用。「複数のエージェントを必要に応じて生成する」例がデモされ、参加者からも「すごい発想だ」との声が多く上がっていました。
LT6:「Bedrock Converse APIでTool useのJSONモードを使って"クエリ拡張"と"クエリ分解"を試してみた」
登壇者: 山崎 毅(株式会社ヌーラボ)
最後はヌーラボの山崎さんが、BedrockのConverse APIにおける「ツールユースJSONモード」を活用し、問い合わせを拡張・分解する仕組みを紹介。 問い合わせ文が曖昧だったり複数要素を含む場合、RAGやLLMが適切に処理しきれないケースもある。そこでTool use機能を使って、
「クエリ拡張」:関連語や動義語を追加して複数クエリを生成
「クエリ分解」:問いを複数の短いクエリに分割 という手法を実装すると精度が向上する事例があるとのこと。 また、生成されたクエリ数や焦点を制御するためにツールの定義を詳しく書き込むのがポイントだと強調。 ただし「LLMの性能や、ラグのデータ量などに左右されるので、実際に試して効果を検証することが不可欠」とまとめました。
Bedrockウルトラクイズ
LT終了後には恒例(?)の「Bedrockウルトラクイズ」が行われました。参加者がオンラインでクイズに回答し、 「この中でストリーミング出力に対応していない機能はどれか?」 など、かなり難度の高い問が連続。 最終問題まで正解を重ねて優勝した人はわずか5問正解という結果からも、Bedrockの深い知識を求められるクイズだった様子が伺えました。 Twitter(X)のリアルタイムコメントを見ても「かなりマニアック」「知識レベルが試される」といった声が多かったのが印象的でした。
Bedrockのお悩み相談ディスカッション
クイズのあとは、再びAWSの久保さんを交えたパネルディスカッションタイム。コミュニティから寄せられたフィードバックに対して、AWS本社のサービスチームへどのように伝えているかが具体例を交えて説明されました。
Monitoring・トレースログの充実
ガバナンスとSCP、リージョン制限
ラグ内部の詳細監視
クオータとコスト管理 などが、特に要望の多いポイントとして再度話題に。久保さんは「こういったイベントレポートやフィードバックは全て社内でエスカレーションしている。サービスチームも日本コミュニティの高い知見に大変興味を持っている」と話していました。 エージェント関連の技術が急速に進化しており、AWSも改善を積極的に続けているとのこと。今後のアップデートを楽しみに待ちたいところです。
クロージング
最後のクロージングではアンケートの案内があり、充実の3時間が終了しました。チャット欄やSNSでは「LTがどれも高度」「Bedrockのコミュニティレベルが上がっている」といった賞賛が多く見られました。 今後もJAWS-UG東京支部を中心に「Bedrock Night」は定期的に開催予定とのこと。AIエージェントやRAGなどの事例共有を通じ、生成AIアプリ開発の輪がさらに広がっていきそうです。
全体を踏まえた感想
今回のBedrock Night オンラインは、Amazon Bedrockを使いこなすうえで知っておきたい機能や、OSS・他社ツールとの連携を学べる場として、非常に密度の高い回になりました。
特に印象的だったのは、単なる「LLM呼び出し」から一歩進み、「ワークフロー型」「エージェント型」の仕組みを組み合わせることで、複雑な要求に対応しようとする事例が増えていることです。LangGraphやエージェンティックワークフローを駆使し、実際にSupervisor型マルチエージェントを構築した発表などは、まさに先端の取り組みでした。
また、DifyやLangfuseといったOSS活用、インラインエージェントによるローカル開発など、BedrockのAPIを自在に使いこなすTipsが次々と飛び出し、「すぐ試してみたくなる」雰囲気にあふれていたのも魅力的です。
一方で、運用監視やガバナンス、コスト管理など、本番利用では欠かせない課題も多数挙がりました。しかしAWS側もフィードバックを積極的に受け止め、サービスチームに速やかに共有しているようです。
全体を通じて、コミュニティとAWS、そしてユーザー企業が知見と要望を交換し合いながらBedrockを育てていくという、理想的なイノベーションサイクルを感じました。 Bedrockと生成AIの世界はアップデートの速度が速く、近い将来「次のBedrock Night」ではさらに先鋭的な活用例や改良が報告されるはずです。本番稼働のノウハウを深めたい方は、ぜひこのコミュニティにも参加して、AIの未来を共に切り拓いていきましょう。
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