4️⃣
「ITエンジニアの転職学 ― 40歳へのカウントダウンとの向き合い方」イベントレポート
公開
2025-03-30
更新
2025-03-30
文章量
約3026字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
2025年3月21日、「ITエンジニアの転職学」の第7回として「40歳へのカウントダウンとの向き合い方」というテーマのオンラインセミナーが開催されました。主催はForkwell、登壇者はエンジニアのキャリアオタクとして知られる赤川さん。過去には「年収800万円の壁・1000万円の壁」を扱う回など、エンジニアの転職戦略を深掘りするシリーズで毎回大きな反響を呼んできました。
今回は、30代エンジニアが「40歳」という分岐点に差しかかるにあたって、どんなキャリア形成を考えればよいか。近年のテックバブル崩壊や生成AIの進化による業界変化、年収の伸び悩みへの対処法、マネジメントかスペシャリストかといった岐路の悩み、そして家庭や子育てとの両立まで、多角的なトピックが議論されました。
1. 30代エンジニアは、いくら稼いでいるのか
冒頭、赤川さんから示されたのは、Forkwellで収集したエンジニアの年収データ。20代、30代を中心に「自社サービス系」「受託開発系」「上場・未上場」といった区分で整理したところ、30代の平均年収はおおむね500〜600万円台が中心で、自社サービスの上場企業に属している方々はやや高めになる傾向があるとのこと。
さらに、年収700万超や900万超といった高年収層も一定数は存在するが、「30代でも年収が300〜400万円台で長く留まっているエンジニアの方も少なくない」という点も重要な現実。 また、評価が高くなるほど転職に要する期間も長期化しやすく、1年以上かかるケースもしばしば。年収が高くなればなるほど、企業と候補者がお互いにシビアに見極め合うため、転職のために20社以上エントリーする人も珍しくないそうです。
2. 今の30代を取り巻く時代の変化
30代エンジニアが社会人になった2008〜2016年頃から振り返ると、iPhoneの登場やLINEの爆速普及、クラウドシフトなど、ITの大きな転換点をくぐり抜けてきた世代です。しかし、ここ数年は
テックバブル崩壊 米シリコンバレーの大手テック企業でのレイオフが相次ぎ、スタートアップ投資にも影響
物価高・インフレ 企業によってはコスト最適化を優先し、組織再編を進める動き
生成AIの勃興 コーディングや設計をAIが行う時代が急速に到来し始め、エンジニアの在り方が問われる
出社再開の流れ フルリモートからハイブリッドへの移行が増え、育児や家庭との両立に悩む30代が増加
といった外的変化が押し寄せています。 さらに、個人側でも「30代からは年収がなかなか伸びない」「マネージャーかスペシャリストか?」という選択や、「家庭を持つ人が増え、子育てをどう両立するか?」といった悩みが増す。変化の波を受けつつ、40歳という折り返し地点へ向かう心の準備が必要になってくると赤川さんは指摘しました。
3. 30代はどんな位置づけの時期なのか
キャリア論を多数参照しながら、赤川さんは次のように整理しています。
20代 探索段階。様々な業務を経験して、少しずつ得意分野を模索する
30代 強みを確立する段階。何らかの役割(テックリード、アーキテクト、EMなど)を引き受け、専門性やリーダーシップを伸ばす
40代 複数の強みを掛け合わせたり、培った人脈や信頼を軸により長期的な貢献を考える段階
たとえば、20代でフロントエンドかサーバサイドか迷っていた人も、30代では「フルスタックエンジニアとしての強みを磨く」「SREとしてチーム全体を安定運用する」といった具体的な役割を担うことが多くなる。こうした「肩書き」が、その後のキャリアを左右すると言います。
4. 30代エンジニアの転職事情
転職事情も、20代に比べると厳しさが増してくる一方、強みが確立している人は大幅年収アップが狙える可能性があるとのこと。 実際に「700万円以上の高年収ゾーン」で転職を狙う人ほど、応募企業数が増え、内定までに1年近くを要するケースもザラ。企業側からすると「マネージャー経験」「自社サービス開発でのリード経験」「主体的な意思決定のエピソード」などを非常に重視するため、書類選考と面接がややシビアになるのです。
また、自社サービスへの転職やスタートアップへの挑戦によって、数百万円単位で年収アップした例もあれば、あえて給与ダウンを受け入れて大きな裁量を得る例も見られる。30代は「長く在籍した会社での社会資本を捨てて飛び込む」リスクもあるため、より慎重な見極めが必要だという意見が印象的でした。
5. 40歳へのカウントダウンとの向き合い方
イベントのクライマックスでは、「では具体的にどう行動すればいいのか?」というアクションプランが提示されました。
強みを表す役割や肩書きを引き受ける
30代は強みを形成する時期。少し背伸びしてでも、テックリード・EM・アーキテクトなどの役割にチャレンジする。
社内外でのフィードバックを活用し、自分の得意領域を客観的に把握すると良い。
社会資本を活かし、長期貢献を見据える
自組織で積み上げた信頼関係・ドメイン知識を生かした仕事で成果を出し、転職市場でも評価されやすい状況を作る。
社外コミュニティやSNSでの発信など、「外に向けて」人脈を形成しておくのも有効。
自分の美意識(価値観)と会社の期待を両立させる
「会社の指示通りにこなす」だけではなく、自ら意思決定した事例を築く。30代後半はさらに「リーダーとしての主体性」を問われる場面が増える。
家族やプライベートを大切にする
30代は子育てや介護など、ライフイベントも本格化。無理せず周囲に頼る「受援力」を身につけることが、キャリア形成を継続する鍵になる。
40代のキャリアに備えて、いま行動する
「もう少し時間がある」と思っていると、あっという間に40歳になる。自分の市場価値や人脈を再確認し、必要なら1〜2年かけて準備してから転職に踏み切るなど、計画的に動くことが大切。
全体を踏まえた感想 〜「節目」としての30代をどこまで楽しむか〜
30代はビジネスパーソンとして円熟味を増し始める反面、年収の頭打ちやマネジメントかスペシャリストかといった分岐点に立たされる時期でもあります。そこへテックバブル崩壊や生成AIの急激な進化が絡み合い、職場環境や働き方も日々揺れ動く。もはや「のんびりしていれば何とかなる」段階はとっくに通り越しているかもしれません。
しかし赤川さんのメッセージの根底には、 「30代は強みを確立する大切な節目。家庭やプライベートも含めて試行錯誤しながら、まだまだ楽しめる」 という前向きな姿勢がありました。 厳しさはあれど、まだ数回は大きなチャレンジができる時期。40歳以降の生き方を見据えながらも、転職活動に身を投じるなら「社会資本を活かして長期視野」で行動する。あるいは子育てに専念する期間を作ってもいいし、思い切りスキル研鑽に没頭してもいい――選択肢は広く、それを主体的にデザインすることこそが「人生の満足度を高める秘訣」なのかもしれません。
悩みや迷いが募るなら、専門家やコミュニティに相談して自分なりの一歩を踏み出すのも大いにアリでしょう。30代は決して“終わりのカウントダウン”ではなく、“新しいキャリアの扉が開く”節目でもある。そう思える力強いメッセージが詰まったイベントでした。
Yardでは、テック領域に特化したスポット相談サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポット相談をお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。