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「生成AIを活用して業務改善した話 ~『1000本ノックGPT』で営業トレーニングを省力化!メンバーのナレッジを標準化~」イベントレポー
公開
2025-03-29
更新
2025-03-29
文章量
約2496字

Yard 編集部
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2025年2月12日(金)に開催された「Classmethod AI Talks (CATs) #16」は、クラスメソッド社内で進められている営業トレーニングの自動化にフォーカスしたセッションでした。
生成AIを用いて、これまで“先輩と後輩のマンツーマン”が基本だったトレーニングを大胆に効率化――通称「1000本ノックGPT」の全貌が明らかに。運用やプロンプトのこだわり、実際の効果など、熱量たっぷりに共有された内容をまとめてご紹介します。
イベント概要
クラスメソッドの「AI Talks (CATs)」は、生成AIにまつわる実践事例や最新情報をコミュニティ形式でお届けする勉強会シリーズです。今回は「生成AIを活用して業務改善した話」をテーマに、営業メンバーの実践事例を掘り下げました。
登壇者は 髙山秀実 さん (営業統括本部 セールスオペレーション部)。 「1000本ノックGPT」なる仕組みを作り上げ、営業トレーニングを効率化させた秘話を共有してくれました。
なぜ「1000本ノック」だったのか
背景と課題
入社直後の営業新人が直面する壁 サービス内容が多彩なクラスメソッドのメンバーズ。50ページほどの資料や複数のプランを正確に覚え、さらに顧客からの突発的な質問に答えられるようになるまで、なかなか時間がかかる。
既存の研修手法の限界 ロールプレイをしても「サービス説明」が大半を占め、実際の顧客質問への対応練習が十分に行えない。先輩を捕まえて“質問連打”を試みても、先輩側の負荷が大きいし、質問内容が重複したりバラついたりする。
そんな課題を解消するために生み出されたのが、社員間でいう「1000本ノック」ツール。過去の顧客質問と想定回答をセット化し、先輩がひたすら新人に投げかける形で知識定着を図っていたのです。これにより一定の効果は出たものの、依然として先輩メンバーのアサインが必要でした。
1000本ノックGPTとは?
「先輩社員の負荷をさらに下げたい」「新人が好きなタイミングで練習できれば」――そんなアイデアを出発点に、チャットGPT(Enterprise版)へ“教科書”を読み込ませ、新人対応の擬似先輩役を担ってもらう仕組みを作成。
機能1: 新人トレーニング
レベル選択やトピック選択に応じて、GPTが質問を出題 資料に書かれている標準的な回答を新人が行い、GPTが模範回答と比較しつつ追加質問を投げかける。回答が不十分な場合は「不足しています」「ここを詳しく」と誘導。
最終的にフィードバックとアドバイスを提示 強み・弱み、補うべきナレッジなどをGPTがコメント。あたかも人間の先輩が見守るような自然な流れが作られている。
音声会話にも対応 ChatGPT Enterpriseの機能を活用し、コーチと音声やり取りの模擬練習も可能。
機能2: 逆質問への回答(社内チャットボット)
ユーザーがGPTへ自由質問 例: 「海外法人でも契約できるの?」「保険は適用される?」など。
GPTはアップロード済みの資料を“検索”し、該当部分があれば回答 「確信度○○%、参照資料 シート#13」などと明示。自信がない場合は「回答不可」と言い切る。
管理者視点で「チャットボットの回答信頼性をどう確保するか」は大きなテーマ。1000本ノックGPTでは、参照元の明示と追加質問を徹底するガイドラインをプロンプトに書き込み、回答精度向上を図っているそうです。
プロンプト設計の工夫
多機能なGPTを“自分たちの用途に特化させる”ために、以下の点を重視。
ロール(役割)の明確化 GPTは「優秀なコーチ」として新人に質問を投げ、回答の良否を細かくチェックする――というペルソナを設定。
見出しや強調表記 “必ず資料の記載内容のみに基づく”“回答に迷ったら再質問する”など、守ってほしいルールを太字やタイトルで目立たせる。
Web検索をOFFに 参照はアップロードファイルのみ。外部知識を参照させないことで、回答のブレを防ぐ。
参照元リンクの提示 「あなたの回答はシート何番に書かれている?」をGPTに示させ、回答の裏付けを取りやすくする。
こうした細かな指定が功を奏しており、営業部員が実際にトレーニングや逆質問に使っても違和感なく運用できているとのことでした。
運用体制とメンテナンス
スプレッドシートを社内で一元管理 過去顧客からの質問や営業向けFAQをそこに集積。
ガスなどで社内チャットログを毎日エクスポート 新たな問い合わせを拾い、新たにスプレッドシートへ追加。
ChatGPTに上げるPDFは定期的に更新 質問内容やサービス仕様の変化に応じて、バージョンアップを欠かさない。
このように、組織として“AI活用の仕組み”そのものにオーナーを置き、継続して改善を続ける姿が印象的でした。
イベントを終えて
営業メンバーが日々直面する“サービス説明の壁”と“顧客の突発質問”。これまで先輩社員が担っていたトレーニングや質疑応答サポートを、生成AIが代替する――言うは易しですが、そのためのデータ整備やプロンプト設計、運用体制づくりなど実に丁寧な仕込みが必要と分かりました。
結果としては「1000本ノックGPT」は新人だけでなく、在籍メンバー全員の知識定着にも効果を発揮し、さらには“社内チャットボット”機能という副産物も生まれる。運用メンテナンスも、セールスオペレーション部がしっかりオーナーとなって継続改善しているという点が成功の大きな要因と感じられます。
今後はさらに対応サービスの範囲を広げたり、提案内容のアイデア出しをサポートさせたりと、発展の余地は多そう。営業という現場が抱える負荷を軽減し、新たな価値創造に導く素晴らしいユースケース。
「生成AIによる業務改善」のロールモデルを生々しく見せてくれた本イベントは、多くの参加者に“これ、うちでもやれるかも”という気づきを与えたはず。AI活用の工夫やノウハウを持ち寄って交流し合うCATsの意義がまた一つ実証された回ともいえるでしょう。
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