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変革を牽引するプロジェクトマネジメントの極意 ~パーソルグループ各社のPMから学ぶ、パートナー協働×合意形成の現場知見~ レポート
公開
2025-03-13
文章量
約2845字
2024年12月12日、パーソルグループ各社のプロジェクトマネージャー(以下、PM)3名が一堂に会し、それぞれの現場で培った「変革を成功に導くプロジェクトマネジメント」の知見を共有するイベントが開催されました。
非IT部門との合意形成、外部パートナーとの協働、そして大規模プロジェクトで陥りがちなコミュニケーション・ボトルネックなど――実務のリアルな悩みをどう乗り越えたのか。90分という時間に凝縮された貴重なケーススタディは、まさに“明日から試せるPMのヒント”が満載でした。
本レポートでは3つの事例を軸に、登壇者たちがどんな困難をどう解決し、どうチームを巻き込んできたのかをご紹介します。
求人原稿の掲載リードタイム短縮への挑戦(パーソルキャリア)
最初のセッションはパーソルキャリアによる「求人原稿の掲載スピード」をいかに短縮したか、というテーマです。もともと10日ほどかかっていた掲載までのリードタイムを5日ほどに圧縮するために、社内外の関係者を巻き込んだ事例が語られました。
取り組みのポイント
- 外部パートナーとの連携強化
- 担当PM自身がシステムの仕様・データフローにまだ慣れていない段階でも、過去に同社の似た領域で実績を持つ外部パートナーをアサイン。信頼できる技術と業務知識を持った相手とともに検証を進めたことで、限られたリソースでも円滑な要件詰め・テスト設計ができたそうです。
- オープンなコミュニケーション
- 「課題を隠さず共有する」「メンバーの意見を積極的に取り入れる」など、壁打ちをしながら前進する姿勢が印象的でした。リスクや不安を早めに話し合うことで、“小さな火種”を放置せず対処できたとのこと。
- 高品質なテスト戦略
- 掲載スピードを高めるにはシステム障害のリスクを極力抑える必要があるため、テストシナリオをマトリクス化するなど手戻りを防ぐ工夫を徹底。結果、受け入れテストでクリティカルなバグがほぼ出ず、大きなインパクトを実現しました。
グループ内管理会計・財務会計の業務プロセス統一化プロジェクト(パーソルホールディングス)
続いてはパーソルホールディングスの事例。国内グループ全148社、総勢1万8,000名が利用する管理会計・財務管理システムを刷新するという、まさに超大規模プロジェクトです。
取り組みのポイント
- Fit to Standardの難しさ
- 既存の複雑な業務を標準機能へ“寄せる”やり方は、確かにスピードやコスト面で利点があります。しかし、逆にカスタマイズの自由度が高いサービスを選ぶと、「何でもできる」ために、かえって合意形成がこじれてしまうことも。経営層、IT部門、現場ユーザーなど、利害関係者が多岐にわたる場合ほど、標準機能で割り切る勇気の大切さが語られました。
- 合意形成の段取り
- 大規模プロジェクトゆえに、経営層や事業部など様々な承認が必要になります。そこでまず経営者から「本プロジェクトをなぜやるのか、目指す世界は何か」を発信してもらい、全社レベルでの理解を得る。そのうえで各部門の意見を拾っていく段取りづくりがポイントとのこと。
- 業務知識×PMスキル
- 業務視点のPMだからこそ、法務・会計ガバナンスや規定との整合性を正しくチェックしやすいのも強み。業務側とIT側に“橋渡し役”がいることで、プロジェクト全体がスムーズに動くという実感を得られたそうです。
顧客満足度向上を実現したe-契約書プロジェクト(パーソルテンプスタッフ)
最後はパーソルテンプスタッフが取り組んだ「e-契約書導入」の事例。顧客満足度向上だけでなく、紙と印刷コスト削減、雇用機会の創出など、多角的なメリットを狙った挑戦でした。
取り組みのポイント
- プロジェクト体制の複雑さ
- 契約書の電子化では、派遣スタッフ・クライアント・自社の3者すべてにメリットがある一方、関連するステークホルダーも多岐にわたります。開発パートナーだけでなく、委託先やグループ会社などを含め、総勢100名以上が関わる体制が組まれました。
- キックオフで大きなビジョンを共有
- 「契約書電子化により社会にも貢献する」という大方針を、キックオフの冒頭とラスト、そして責任者の総括という3重構造で繰り返し伝達。集まった関係者全員が“同じ方向”を向くための演出が、後の合意形成をぐっとラクにしたようです。
- WBSより一段粗めのスケジュール管理
- タスク抜けを防ぎつつ、あまりにも細かすぎる管理で現場を疲弊させないよう、詳細と大項目の中間レベルを定期的に“可視化”し、前後タスクの影響を全員でチェック。担当者が多いからこそ、定例会で少しずつ認識をすり合わせる工夫が功を奏しました。
質疑応答から見えたPMのリアル
イベント後半のQ&Aでは、参加者から多くの実務的な質問が飛び交い、PMならではの頭の痛いテーマも次々に取り上げられました。
- 「業務部門が他人事になりがち…」
- システム側が手厚くサポートしすぎると、ユーザー部門が主体性を失うケースがある。そこで役割定義と責任範囲を明確にし、あくまでも“自分たちのプロジェクト”だと認識してもらうことが肝要との意見が挙がりました。
- 「数百名単位のプロジェクトはどう合意形成する?」
- まず経営層が方向性を明確に提示する。そのうえで、個別調整が発生しやすい業務設計はIT部門任せではなく“業務設計専任チーム”を置くとスムーズだという事例が紹介されました。
- 「カスタマイズ万能サービスの落とし穴」
- カスタマイズが豊富だとユーザー要望を無制限に通そうとしてしまい、収拾がつかなくなる恐れがある。機能要件だけでなく、業務自体の見直しもセットで考え、標準機能で済む部分は割り切る勇気が必要だという教訓が語られました。
全体を踏まえた感想
今回のイベントは、単に開発体制やツールの話に終始せず、「プロジェクトを成功させるにはPM自身がどれだけ率直に課題をさらけ出せるか」「経営者の想いをどう噛み砕いて全社に伝えるか」「外部パートナーをチームの一員として信頼し合える関係を構築できるか」など、極めて“人間力”にフォーカスした話題が目立ちました。
誰もが経験するような“PMの壁”に対し、3名の実践者はそれぞれの環境で知恵を絞り、着実な成果を上げています。その中でも共通して感じられたのは、「最初に大きな絵を全員で共有する」「役割と責任範囲を言語化しておく」「スケジュールやリスクを可視化しながらこまめに摺り合わせる」――この3点が、プロジェクトを迷走させず前進させる原動力になっているということでした。
まさに“合意形成×パートナー協働”が鍵となる変革プロジェクトの実践知を、生々しく学べる貴重な機会。大規模案件に限らず、日々の小さなプロジェクトにまで応用できる視点が詰まった、本当に充実した90分だったと感じます。今回の学びを活かして、プロジェクトを動かす皆さんが一歩先へ踏み出すきっかけになれば幸いです。
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