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【イベントレポート】モバイルアプリ開発から⼤量データ処理まで!PayPayユーザー6,600万人が利用する加盟店獲得・審査・CS機能を支えるSalesforce開発の挑戦 PayPay Growth Tech vol.9
公開
2025-03-10
文章量
約3939字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
2024年12月10日に開催された「PayPay Growth Tech vol.9」は、国内トップクラスの利用者数を誇るキャッシュレスアプリ「PayPay」の裏側を支えるSalesforce開発にフォーカスしたオンライン勉強会でした。
全国を網羅する加盟店向けソリューションや審査領域の大量データ処理をどのようにSalesforceで実装し、かつ社内の要望に応えていくのか。
実際に開発・運用を担うSFA&CRM部のエンジニア・PMが、具体的なアーキテクチャや技術的工夫を余すところなく公開し、大いに盛り上がる内容となりました。
イベント概要
- タイトル
- モバイルアプリ開発から⼤量データ処理まで!PayPayユーザー6,600万人が利用する加盟店獲得・審査・CS機能を支えるSalesforce開発の挑戦 PayPay Growth Tech vol.9
- 開催日時
- 2024年12月10日
- 内容
- SFA&CRM部のミッションや組織紹介
- Case.1:Salesforceでモバイルアプリ開発を行う際の課題と工夫
- Case.2:MulesoftやSalesforce Private Connectを使ったAWS連携と、大量データ処理を支えるアーキテクチャ設計
- 参加対象
- Salesforceエンジニア
- SaaS連携や大量データのアーキテクチャ構築に興味があるエンジニア
スピーカーはPayPayのSFA&CRM部で実際に開発・運用をリードしているメンバー。モバイルアプリで営業を支援する話から、1日100万件を超える審査データをハンドリングする話まで、バラエティ豊かなSalesforce活用事例が披露されました。
SFA&CRM部の組織・ミッション
イベント冒頭では、SFA(Sales Force Automation)とCRM(Customer Relationship Management)の開発組織についての説明がありました。
なぜSalesforceがコアに?
PayPayの加盟店は中小店舗から大手企業まで多岐にわたり、日本全国での営業活動や加盟店サポートは膨大な規模にのぼります。これを効率的に一元管理し、且つ現場からの要望に素早く対応するには、SaaS基盤が必須だったとのこと。特にSalesforceが強みを発揮する理由として、以下の点が挙げられました。
- 多彩な標準機能
- ダッシュボードやオブジェクト設計などSalesforce標準で実現できる部分が多い
- 拡張性・カスタマイズ性
- Lightning Web コンポーネント(LWC)などを使い、“Salesforceの枠を超えた開発”が可能
- セキュリティと安定稼働
- 大手企業の利用実績も豊富で、保守・運用コストを抑えられる
SFA&CRM部が直面する“現場の声”
一方で、現場のニーズは決して“標準機能だけで十分”なレベルではないそうです。以下のような課題が常に存在するとのこと:
- スマホアプリとしてもっと視覚的に分かりやすくしてほしい
- 加盟店審査のデータは1日100万件超え!Salesforce内に溜めるのは限界がある
- セキュリティ要件は最優先。PayPayブランドを守るためにも安全なアーキテクチャを
ここから2つの事例が順に紹介されました。
Case.1 モバイルアプリ開発×Salesforce(営業領域)
「営業担当者が直感的に使えるスマホアプリをSalesforce上で作れないか?」そういった要望に応えて、LWC(Lightning Web コンポーネント)を用いたスクラッチ開発に挑戦した事例です。
Salesforceモバイルアプリの課題
標準のSalesforceモバイルアプリはPC版のUIをそのまま縦画面に落とし込む構造のため、「見づらい」「操作が分かりにくい」という声が多かったそうです。さらに、PayPayの独自ブランディングルール(カラーやUIガイドライン)への適合も必要でした。
LWCを用いた解決アプローチ
- Lightning Web コンポーネントで全面的に画面を作り込み、レスポンシブ対応を実現
- 営業成績をモチベーション高く管理する仕掛けとして、バッジ付与や達成度のビジュアル表示を搭載
- PayPayのブランドに合わせた色使いやアニメーション効果も盛り込み、スマホアプリらしいUIにカスタマイズ
結果として、従来のSalesforceモバイルより圧倒的に操作性が向上し、「これなら使いたい」と営業スタッフから好評とのこと。日本でLWCを本格活用する事例はまだ少なく、貴重な技術的知見が詰まった発表でした。
Case.2 大量データ処理×アーキテクチャ調整×Salesforce(審査領域)
2つ目は審査部門をSalesforceに集約し、1日100万件以上の審査データをいかに捌くかがテーマ。SalesforceとAWSを組み合わせる際のアーキテクチャ戦略が詳しく解説されました。
1日に100万件超え!PayPay加盟店審査の実情
- 加盟店の申し込みに伴って発生する各種データは膨大で、そのすべてをSalesforceに保持するのは非現実的
- 審査結果を可視化し、カスタマーサポートも同じ画面で参照できるようにしたい
- しかもセキュアな連携が必須で、やりたいことは多いがリスクも大きい
Salesforce Connect, Mulesoft, Private Connectの連携
ここで鍵となったのが、Salesforce Connectを中心としたさまざまなサービスの組み合わせです。
- Salesforce Connect外部システム(AWS上のデータベースなど)とリアルタイムに連携して、Salesforce画面上で編集・閲覧を可能にする
- MulesoftAPI管理プラットフォームとしてトラフィックをコントロールし、AWSとSalesforce間のデータやり取りを統合
- Salesforce Private Connectプライベートネットワーク経由の安全な通信を実現する仕組みで、機密情報を扱う審査業務でも安心感を担保
この構成によって、巨大なデータ処理をAWS側で任せつつ、SalesforceのUIやレポート機能で簡単に確認できるようになったとのこと。「SaaS単独ではなく、AWSなど外部サービスと組み合わせることで、Salesforceをさらに拡張する」好例として非常に興味深い内容でした。
質疑応答パート
イベント後半のQ&Aでは、参加者からの具体的な質問が多数寄せられました。特に盛り上がったトピックとしては、
- 「LWCはどこまでスマホ特化のUIを作り込めるのか?」→ コンポーネントの作り方次第で、ほぼネイティブアプリに近い操作感を作ることも可能
- 「Salesforce ConnectのAPI制限や速度のボトルネックはどう対処している?」→ MulesoftでAPIゲートウェイを管理し、スループットや認証を最適化。Private Connectの設定で安全性と速度を両立
- 「PayPay独自のセキュリティ要件を満たす設計は、どのフェーズで詰める?」→ 基本は企画段階で要件を洗い出し、アーキテクトやDevSecOpsチームと連携しながら段階的に検証
Salesforceをメインとしたエンジニアだけでなく、セキュリティやネイティブアプリ開発に関わる参加者にとっても有益なディスカッションが行われました。
振り返りと今後の展望 —— Salesforceで拡張するPayPayの未来
今回のイベントを通して感じたのは、SaaSの標準機能を越えて、エコシステム全体を巧みに組み合わせることで、想像以上のシステムを作れるということです。PayPayほどの巨大ユーザー数と多様な業務要件をもつサービスが、Salesforceを単なるCRMにとどめず、モバイルアプリ開発基盤や大量データ処理のハブとしても使いこなしている点は大きな刺激になります。
- LWCを使ったSalesforceモバイルアプリの開発→ 営業スタッフの満足度向上や、ガッツリしたUI演出が可能になる
- Mulesoft + Salesforce Private ConnectでAWSとシームレス連携→ 頻繁かつ大量のデータ処理を外部化しつつ、Salesforce上ではリアルタイムに見せられる
- 組織を横断するセキュリティ意識→ ブランディングや情報保護を高次元で両立し、システム規模に応じた最適解を追求
PayPayのように急成長し、国民的アプリに発展したサービスだからこそ、現場からあがる要求は多岐にわたるようです。しかしSFA&CRM部のエンジニアたちは、Salesforce本来の強みを活かしながら、外部との連携や独自コンポーネント開発でニーズを満たしていました。
SaaS+独自開発のハイブリッドアプローチは、今後のエンタープライズシステム開発でも標準的な選択肢になるかもしれません。参加者からも「早速うちでもSalesforce Connectを検証してみる」「LWCを使ってネイティブライクなUIを作ってみたい」といった前向きな声が上がっており、熱量の高い勉強会だったといえるでしょう。
イベントのクロージングでは、「今後もPayPayの裏側のテック情報を発信していく予定」とのアナウンスがあり、さらなる技術の深掘りや追加事例の紹介が期待されます。
Salesforceエンジニアはもちろん、SaaSやAWSを組み合わせた大規模データ処理に興味のある方は、ぜひ次回のPayPay Growth Techにも注目してみてはいかがでしょうか。
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