🦆
「DuckDBの魅力解剖!〜現場から見る活用術とその可能性〜」イベントレポート
公開
2025-03-04
文章量
約3516字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
データエンジニアリング領域におけるDuckDBのユースケース(株式会社タイミー chanyou)
1. オブジェクトストレージへのクエリエンジン
2. ローカル前処理やデータ検証
3. セル単位の差分確認
これからのデータ分析はPandasにDuckDBも併用して高速化しようという話 ver2025(千株式会社 よねすけ)
1. Pandasと同じような操作感で扱える
2. 1年前よりさらに高速に
3. LLM×DuckDBでの連携
15分で学ぶDuckDBの可愛い使い方 DuckDBの最近の更新(テックタッチ株式会社 not_rogue)
1. DuckDBConやOSSコミュニティの盛り上がり
2. CSV読み込み性能のさらなる最適化
3. ポジショナルジョインなど新機能が続々
全体を通して感じたこと——まだまだ広がる“可愛い”相棒
2025年2月27日、近年注目を集めるシンプルかつ高性能な分析エンジン「DuckDB」にスポットライトを当てたオンラインイベントが開催されました。
軽量でありながら高速という噂のDuckDBは、データエンジニア界隈やPandasユーザーの間で話題沸騰中。その一方で、「具体的にはどう使ったらいいの?」「どんな現場にマッチするの?」という疑問を抱くエンジニアも多いかもしれません。
本イベントでは、実際にDuckDBを導入・活用している3名の登壇者が、活用の背景や直面した課題、そして最新のアップデート情報まで縦横無尽に語り尽くしてくれました。
データ基盤の構築や分析ツールとしての可能性、さらにはLLMとの連携まで——幅広い事例とノウハウは必見です。
以下では、それぞれの発表内容を振り返りつつ、本イベントで見えてきたDuckDBのポテンシャルと魅力をまとめます。
データエンジニアリング領域におけるDuckDBのユースケース(株式会社タイミー chanyou)
最初に登壇したのは、株式会社タイミーでデータ基盤の構築・運用に携わるchanyou氏。「中央集権的なデータウェアハウスを完全に置き換えるわけではないが、DuckDBが有効に機能する領域は確実にある」という視点で、いくつか具体例を示してくれました。
1. オブジェクトストレージへのクエリエンジン
S3やGCSなどのオブジェクトストレージにあるCSV・Parquet・JSONファイルに対して、DuckDBなら一貫した方法で簡単にクエリを実行できる点は大きな魅力。クラウドのロックインを気にせず運用できるため、中規模データを扱うETLステップや検証フェーズで「DuckDBの組み込みは手軽で役立つ」と言います。
2. ローカル前処理やデータ検証
「吸い上げた生データのユニークチェックや欠損の検証など、ETLの前段でちょっとした処理を行うときにもDuckDBは便利」とのこと。Python環境をわざわざ整えずとも、CLI一本でデータを取り回せる手軽さが“地味に嬉しい”と感じているそうです。
3. セル単位の差分確認
タイミー社では、S3上のファイルからBigQueryにロードした後、レコードが完璧に一致しているかをDuckDBでセル単位に比較してチェック。異なる場所にデータが置かれていても、同じようにテーブル扱いしてエクセプトをとれば簡単に差分が分かる——これこそDuckDBの強みといえるでしょう。
chanyou氏は「ガバナンスや厳密な権限管理が必要な場面をDuckDB単体でまかなうのは難しいが、“永続性を求めない”タスクなら気軽に導入できる」と強調します。軽量・高性能な特徴を活かして、従来のデータウェアハウスと併用し、無駄なコストや手間を削減するアプローチは、多くの現場でも応用できそうです。
これからのデータ分析はPandasにDuckDBも併用して高速化しようという話 ver2025(千株式会社 よねすけ)
2人目に登壇したのは、MLエンジニアとして保育事業領域でAI活用を推進するよねすけ氏。Pandasユーザーの視点から「ダックDBを併用すると、データ分析がどう変わるか」を解説しました。
1. Pandasと同じような操作感で扱える
よねすけ氏が個人ブログに書いたとおり、「Pandas DataFrameの代わりにDuckDBを使うだけで、コードを大幅に書き換えずにパフォーマンスを向上できる」のが最大の魅力。そのままリードCSVやto_dfを使えるため、数百行程度の軽微な修正でも高速化を実感できます。
2. 1年前よりさらに高速に
イベントでは「2023年版」「2025年版」での速度比較も紹介。DuckDBやPandas自体がバージョンアップで高速化が進んでいるとのことで、よねすけ氏自身が検証した結果「大規模データのとき、DuckDBがよりリード優位性を発揮し、小規模な場合はPandasが勝る」など、使い分けのガイドも明確になりました。
3. LLM×DuckDBでの連携
最新版の構成例として「LLM(たとえばGeminiなど)とDuckDBを組み合わせ、会話的にデータの統計情報を取り出すユースケース」を提示。特に説明可能な形でエージェントにSQLを発行させ、裏側でDuckDBが実行し、利用者に結果を返す——というデモンストレーションが「楽しそう!」と反響を呼んでいました。
よねすけ氏は「DuckDBは大容量データに向いているが、今後はLLMとの組み合わせで新たな可能性が生まれる」と期待を寄せます。
15分で学ぶDuckDBの可愛い使い方 DuckDBの最近の更新(テックタッチ株式会社 not_rogue)
最後は、DuckDBに関する日本語記事(通称「🦆🦆🦆🦆🦆🦆DuckDB入門🦆🦆🦆🦆🦆🦆」)でお馴染みのnot_rogue氏。ここ1年ほどでDuckDBがどう進化したか、コミュニティや最新リリースのポイントを紹介しました。
1. DuckDBConやOSSコミュニティの盛り上がり
世界各地でDuckDBConが開催されるようになり、ドキュメントや勉強会、書籍なども充実。「ダウンロード数も2023年比で大幅増加しており、いままさにエコシステムが広がっている段階」と語ります。
2. CSV読み込み性能のさらなる最適化
リリースのたびに、「CSVなど外部ファイル読み込みの高速化」が報告されるのもDuckDBの面白いところ。一般的なRDBは読み込み性能をそこまで強調しないなか、DuckDBは「ローカルやサーバーどちらでも使われる」性質上、CSV読み込みの速さを重視しているのだそうです。
3. ポジショナルジョインなど新機能が続々
not_rogue氏が例として挙げた「ポジショナルジョイン」は、テーブル上の行番を基準に結合できるユニークな機能。パンダスのconcat
的なニーズに対応しており、まさに軽量データフレームエンジンらしい拡張機能といえます。その他にもGoogleシートやLinuxコマンドを読み込むエクステンションなど、ユニークな追加が絶えないのがDuckDBコミュニティの活気を示しています。
全体を通して感じたこと——まだまだ広がる“可愛い”相棒
約1時間のイベントを通じ、「DuckDBは実は単なる分析エンジンに留まらず、ファイルリーダーやETLステップ、データフレームの置き換え役、さらにはLLM連携まで、多様な領域でその軽量・高速な特性を発揮できるツール」だと改めて実感しました。
DuckDBが現場にもたらすメリットは、大きく2つに集約されます。1つは「ローカルでもサーバーでもサクッと動く気軽さ」。
もう1つは「データをどこに置いていても、同じ書き方でクエリできる一貫性」です。
もちろん、ガバナンスやアクセス制御、コラボレーション機能など、大規模運用の課題は残っています。けれども「巨大なデータをいきなり全部DuckDB管理に置き換えよう」という発想ではなく、「データ基盤や分析ツールを補完する“一部用途”として併用する」方が、現場ではかえって実践的。
実際の登壇事例からも、差分検証・比較やテスト、軽いサブクエリ的な扱い、Pandasとの併用などで手軽に導入し、確実に生産性を上げる姿が印象的でした。さらに今回、LLMとの連携事例も垣間見えたことで、私たちはDuckDBの“使える守備範囲”がますます拡張しているのをはっきりと感じ取れます。
もし「扱うデータが中規模までなら、ETLを柔軟にしたい」「Pandasだけでは処理が遅いケースが出てきた」「ちょっとした差分比較を楽にやりたい」と感じるなら、DuckDBの力を試すには絶好のタイミングかもしれません。メインのデータウェアハウスやRDBを捨てずとも、可愛い🦆相棒として導入してみてはいかがでしょうか。
Yardでは、テック領域に特化したスポット相談サービスを提供しています。
興味がある方は、初回の無料スポット相談をお申し込みください。
また、資料請求やお問い合わせもお待ちしております。テック領域の知見を獲得し、事業成長を一緒に実現していきましょう。