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【イベントレポート】プロジェクトリーダー必見!ユーザーに末永く愛されるサービスサイト開発の最適解
公開
2025-03-03
文章量
約4793字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
2024年9月11日、「【POLA・ORBIS × JINS × リクルート】プロジェクトリーダー必見!ユーザーに末永く愛されるサービスサイト開発の最適解」というオンラインイベントが開催されました。
本イベントでは、業界をリードする企業のプロジェクトリーダーたちが登壇し、実際のプロジェクトを通じて得られた知見や課題解決の手法について共有しました。
イベントのハイライト
- 大規模プロジェクトのハンドリング
- プロジェクトが拡大するにつれ、オペレーションの構築や品質向上の課題が浮かび上がります。本イベントでは、モバイルアプリ開発やグローバルITインフラ移行といった具体的な事例をもとに、アジャイル開発やDevOpsの活用、技術的負債への向き合い方が議論されました。
- OMO(Online Merges with Offline)の最適解
- ECサイトとリアル店舗を併用する企業がどのように顧客体験(CX)を最大化するかが重要なテーマとして取り上げられました。特に、グローバル展開を視野に入れたシステム開発の課題や、ECと店舗を連携させるための戦略について、実例を交えて紹介されました。
- クラウドを活用したアーキテクチャ設計
- 最新のシステム開発では、クラウドネイティブなアーキテクチャが重要な役割を果たしています。本イベントでは、マイクロサービスアーキテクチャの導入事例や、クラウドを活用することで得られるメリットについて深掘りされました。
- ユーザーに長く愛されるサービスサイトの開発
- 単なる機能追加ではなく、継続的にユーザーに寄り添うサービスをどのように構築するかが議論されました。プロダクトの成長とともに変化する技術選定のポイントや、長期的な視点での技術改善・組織マネジメントの手法が紹介されました。
【セッション1】WEBと店舗での連携によって顧客体験(CX)の向上を目指すOMOプロジェクトの開発エピソード
登壇者:株式会社ポーラ・オルビスホールディングス 望月 雅敏
本セッションでは、ポーラ・オルビスグループが推進するOMO(Online Merges with Offline)戦略の背景、実装プロセス、直面した課題とその解決策が語られました。
望月氏はまず、ポーラ・オルビスグループの事業概要と、同社が顧客体験(CX)向上のためにデジタル変革を進める理由を説明しました。創業以来、訪問販売を中心にしたダイレクトセリングを強みとしてきた同社は、リアル店舗での接客とオンラインでの利便性を融合させ、シームレスな体験を提供する必要性を強く感じていたとのことです。
OMOプロジェクトの概要
ポーラのOMOプロジェクトは、以下の3つの柱を軸に進められました。
- 顧客データの一元化:
- 事業ごとに分断されていた会員情報を統合し、一貫した顧客体験を提供する基盤を構築。IDの統合を実施し、オンライン・オフライン双方でのデータ連携を強化しました。
- シームレスな顧客体験の提供:
- 店舗とオンラインの情報をリアルタイムで連携し、例えばオンラインでスキンケアの診断を受けた顧客が、店舗訪問時にも同じ情報を活用できる仕組みを導入しました。
- デジタルプラットフォームの構築:
- ポーラ プレミアムパスという会員サービスを立ち上げ、ECサイト・公式アプリ・店舗を横断したサービス提供を実現しました。
直面した課題と解決策
プロジェクトの推進において、以下のような課題が発生しました。
- 事業部ごとのデータ管理体制の違い
- → 組織横断のデータ管理ルールを策定し、統一的な顧客ID基盤を構築。
- 現場の販売スタッフとの連携
- → デジタルツールの導入を進めるだけでなく、スタッフ向けのトレーニングを実施し、OMO戦略の理解を深めてもらう施策を実施。
- 技術的な統合の難しさ
- → 既存システムと新システムの共存を考慮しながら、段階的な移行を実施。
望月氏は、OMO戦略を成功させるためには、単なる技術導入だけでなく、組織全体の文化変革が必要であると強調しました。
今後の展望
ポーラ・オルビスグループは、OMO戦略のさらなる深化を目指し、次のような取り組みを予定しています。
- パーソナライズの強化
- AIを活用したカスタマイズ提案を進化させ、顧客一人ひとりに最適な美容体験を提供。
- リアルタイムデータ分析の推進
- オンライン・オフラインの購買データを活用し、より精度の高いマーケティング施策を展開。
- グローバル展開の視野
- 日本市場での成功事例を基に、海外市場でも同様のOMO戦略を推進。
本セッションでは、ポーラ・オルビスのOMO戦略のリアルな課題と解決策が共有され、デジタルとリアルの融合がいかにしてCXを向上させるかの具体的なヒントが得られる内容となりました。
プロジェクトリーダーやCX向上に取り組む企業にとって、実践的な知見を得られる貴重なセッションとなったことは間違いありません。
【セッション2】EyesTechのリーディングカンパニーを目指すJINSのグローバルOMOとアーキテクチャ
登壇者:株式会社ジンズ 佐藤 拓磨
本セッションでは、株式会社ジンズのグローバルデジタル本部ITデジタル部に所属し、ITアーキテクトやテックリード、セキュリティアーキテクトとして活躍する佐藤拓磨氏が、JINSのデジタル戦略や大規模なシステム開発プロジェクトの進め方について紹介しました。
JINSの概要とデジタル戦略
佐藤氏はまず、JINSが掲げる「Magnify Life」というビジョンと、製造小売(D2C)形態を強みに日本やアジア、アメリカなどへグローバル展開している現状を説明。視力矯正だけでなく、外部刺激を緩和する機能性アイウェアの開発を通じ、日常生活の質を高める新しい価値を提案していると述べました。
また、新たなデジタル戦略として「チャネル横断でシームレスなサービスを提供するシステム基盤の構築」を進めていることを紹介。特に、マイクロサービスやコンテナなどクラウドネイティブな技術を取り入れ、アジャイル開発を社内に内製化することで、リリースサイクルを短縮しつつビジネスの変化に柔軟に対応できる体制を目指していると強調しました。
大規模プロジェクトの事例:JINS公式アプリ
JINS公式アプリの開発・運用は、社内外の多部署や複数の基幹システムを連携させる大規模プロジェクトの一例です。約1,400万人の会員が利用するアプリでは、電子保証書や購入履歴、店舗での度数情報を一元管理できるため、顧客はオンライン・オフラインを問わず、より快適にメガネを選べるようになりました。
一方、開発初期にはプロジェクトオーナー(CEO)との認識ギャップもあり、リリース時期が1年以上遅延。ユーザーが本当に求める体験を深く検討し直した結果、機能を段階的に積み上げる「多段階ロケット計画」を実行し、長期的な視点で成長させるアプローチに舵を切ったといいます。メガネが医療器具かつファッションアイテムという特性を踏まえ、MVP(Minimum Viable Product)の線引きに苦労した点が印象的でした。
アーキテクチャ設計とプロジェクト管理の連動
佐藤氏は「作るもの(アーキテクチャ)を固め、進め方(プロジェクト管理)を設計する」という順序を重視し、要件に振り回されない柔軟なアーキテクチャを目指すことの重要性を強調。技術的負債(Technical Debt)の原因はビジネス上のトレードオフにあるため、なぜその設計を選んだかを記録に残すことが、後々の改善に役立つと述べました。
また、2014年頃から積極的にパブリッククラウド(AWSやAlibaba Cloudなど)を導入している背景や、クラウドネイティブ化によるメリットとリスク管理についても言及。システム環境が乱立しないように、定期的な棚卸しとコスト管理が不可欠だと指摘しました。
まとめ
店舗とEC、ウェアラブルデバイスなど複数チャネルを横断しながら、グローバルへ展開していくJINSの取り組みは、大規模プロジェクトに取り組む企業にとって示唆に富む内容でした。特に、 「要件定義に合わせてシステム設計を変えすぎない」「アーキテクチャを最初に描き、プロジェクト管理と連動させる」 といった考え方は、多くの現場で抱える課題へのヒントとなるでしょう。
最後に、佐藤氏は「新しい当たり前を生み出す」というJINSのビジョンを共有するとともに、内製化を推進するためエンジニアやプロジェクトリーダーを積極的に採用中であることをアピール。クラウドネイティブとアジャイル開発を組み合わせた事業変革への挑戦は、さらに加速していく見通しです。
【セッション3】大規模プロダクトにおける組織作りと技術ポートフォリオマネジメント
登壇者:株式会社リクルート 中里 直人
2024年9月11日、株式会社リクルートの中里直人氏が登壇し、「大規模プロダクトにおける組織作りと技術ポートフォリオマネジメント」について熱心に議論が展開されました。中里氏は、リクルートのビューティ領域エンジニアリング部の部長として、複数のプロジェクトでの経験をもとに、大規模プロダクトの成功に向けた具体的な戦略と課題解決策を紹介しました。
中里氏は、2015年にリクルートに中途入社し、ホットペッパービューティのAndroidアプリ開発を経験後、エンジニアリング部門のリーダーシップを担当しています。彼の発表では、リクルートが直面した技術的な課題とその解決策について具体的に述べられました。
技術的な改善としての3つの事例
- モバイルアプリのリプレースプロジェクト
- リクルートのモバイルアプリは、成長に伴い技術的負債が蓄積し、開発速度が低下していました。2016年から始まったリプレースプロジェクトでは、JavaからKotlinへの移行や、マイクロサービスアーキテクチャの導入により、開発効率が大幅に向上しました。
- APIのリプレースプロジェクト
- モバイルアプリの開発スピードを上げた後、次にボトルネックとなったのはバックエンドのAPIでした。このプロジェクトでは、モノリシックなAPIを分割し、バックエンドフォーフロントエンド(BFF)アーキテクチャを導入することで、開発速度を大幅に向上させました。
- ウェブサイトのリアアーキテクチャの見直し
- ウェブサイトの開発においては、従来のフレームワークによる開発が継続していましたが、2022年にリアアーキテクチャの見直しを行い、コードの再利用性と開発効率を向上させました。特に、APIの共通化により、開発のスピードと品質が向上しました。
組織マネジメントとしての取り組み
中里氏は、これらの技術的な改善を支える組織マネジメントにも言及しました。リクルートでは、アジャイルな開発プロセスの導入や、新規エンジニアの受け入れプロセスの見直しを通じて、チームの効率性を
最大化しています。特に、組織が大きくなるにつれて発生する「コミュニケーションの課題」に対応するため、技術リーダーが積極的にプロジェクトをリードする仕組みを構築しています。
まとめ
本イベントでは、POLA・ORBIS、JINS、リクルートの各社が、異なる業界でのOMOや大規模プロジェクトの開発、技術ポートフォリオの最適化について詳細な知見を共有しました。
特に、クラウドやアジャイル開発の活用、技術負債の管理、組織マネジメントの重要性が改めて浮き彫りとなりました。
プロジェクトリーダーにとって、今回のイベントは実務に活かせる貴重な学びの場となったことでしょう。
今後もこのようなイベントを通じて、業界の最新トレンドや実践的なノウハウを共有し、より良いサービス開発につなげていくことが期待されます。
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