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地域を変えるテクノロジーの活用事例──北九州の地域課題に挑むリーダーと考える「地域社会×デジタル活用」のケース #KITAKYUSHU Tech Day2 レポート
公開
2025-02-27
文章量
約3852字
はじめに
2024年12月17日にオンライン開催された「地域を変えるテクノロジーの活用事例ー北九州の地域課題に挑むリーダーと考える『地域社会×デジタル活用』のケース #KITAKYUSHU Tech Day2」は、北九州という街を軸に、テクノロジーを活かして地域課題を解決するさまざまなチャレンジが共有されたイベントでした。
登壇者は、大手IT企業やベンチャー企業、シビックテックコミュニティなど、立場も経験も異なるリーダーたち。それぞれが培ってきた視点やノウハウを通じて「どうやって地域とテクノロジーを掛け合わせるか」が具体的に語られる場となりました。
ここでは、そのセッション内容を振り返りつつ、登壇者が提示した「テクノロジーと地域社会の交わり」に関する示唆や、北九州ならではの取り組みをまとめます。
1. 北九州市の魅力とTechシーン
北九州市役所 企業立地支援課の担当者からは、北九州がいかに “製造や鉄のまち” という従来イメージだけでなく、実は情報産業にも力を入れている、という背景が紹介されました。
ここ10年で100社以上のIT企業が進出し、国内外のエンジニア雇用が増えている点は注目に値します。
加えて、エンジニアを輩出する教育機関や、DX推進に積極的な自治体の姿勢もあり、北九州は「地域の課題をテクノロジーで解決したい」という人にとって、可能性あふれる土地となっているようです。
会場となるビジネスビル「ビジア小倉」には複数のIT企業が入居しており、フロアを越えた交流が起きやすい環境も整備されています。
地域企業とコミュニティ、そして行政がワンチームになって課題解決を模索できる「近さ」が北九州の大きな武器だと感じられました。
2. 地域社会をテクノロジーで変える、三者三様のアプローチ
2.1 Code for Japan:市民×技術のコラボで課題を解決するシビックテック
最初に講演したのは、一般社団法人Code for Japanの代表理事・関治之(せき はるゆき)氏。市民主体でテクノロジーを活用する「シビックテック」は、単なる有志のハッカソンで終わらず、行政・企業・コミュニティと手を携えて課題解決のプロジェクトに昇華させる点が特徴です。
関氏は、プロトタイピングの重要性や「ピープル(人々)から始める」考え方を強調しました。まずは地域の当事者同士が目指す未来を語り合い、一緒に作れそうなものを試作してみる。
それを支えるのがオープンデータやオープンソースであり、多様なプレイヤー同士のコミュニケーションです。
北九州では、Code for Kitakyushuなどのコミュニティが活動しており、既に地元密着のアプリ開発や地域イベントを進めています。関氏は「自治体や企業、そして市民自身がもっと連携すれば、北九州には多くのポテンシャルがある」と期待を寄せていました。
2.2 日本IBMデジタルサービス:事業会社×テクノロジー企業を経験してわかったこと
続いて登壇したのは、日本IBMデジタルサービス株式会社(以下、IJDS)の辻清(つじ きよし)氏。
もともと地元の大学で情報工学を学んだあと、事業会社のエンジニアとして働き始めるも「もっと開発スキルを伸ばしたい」という思いから転職を決意。現職ではテクノロジー企業ならではの深い技術力が求められる案件に参画し、日々成長を実感しているそうです。
一方で、事業会社では幅広いステークホルダーとやり取りし、コミュニケーション力や調整力が鍛えられたという経験が今も活きているとのこと。
その上で、地域の高校やコミュニティと協同するプロジェクトに関わり、「エンジニアが技術だけでなく、人と対話しながら課題を知りソリューションを提案する」大切さを再認識していると語りました。
北九州には「人が温かく、協力してくれる土壌がある」ことも実感しており、今後さらにエンジニアの活躍機会が広がるのではと期待を込めました。
2.3 ウイングアーク1st:巻き込み力で作る地域×デジタルの未来
最後に登壇したのは、ウイングアーク1st株式会社 地域創生ラボの安(あん)慎之助氏。東京から北九州へアイターンし、新設拠点を立ち上げた経験を交えつつ、地域課題解決の具体例を紹介しました。
同社はデータ活用ソリューションの開発企業でありながら、北九州市やサッカークラブのギラヴァンツ北九州、市立大学・Z世代とコラボしながら「スポーツテックによるまちづくり」や「若者の発想を生かした街の回遊促進」に挑戦。
さらに高校や大学などの教育機関とも連携してイベントやワークショップを開催するなど、地域に根ざしたテクノロジー活用を推進しています。
安氏は「何よりも人と人の繋がりが大切。北九州にはテクノロジー人材やコミュニティが集まりやすい空気があり、協力関係が築きやすい」と述べ、まさに“巻き込み力”がイノベーションの要だと強調しました。
3. パネルトークのまとめ:人と人を繋ぐことで生まれる“未来”
セッション終了後、4名のパネリストとモデレーター(北九州産業学術推進機構の糸川氏)によるパネルトークでは、「地域×テクノロジーが成功する秘訣」が掘り下げられました。印象的だったのは以下のポイントです。
- コミュニケーションが要:コミュニティや行政、事業会社、ベンチャーなど、異なる立場が一堂に会する場を作り、メンバー同士でざっくばらんに意見を交わすこと。そこから具体的なコラボや課題解決の糸口が生まれ、最終的には運用フェーズに移行しやすくなる。
- プロトタイピングでビジョンを共有:いきなり「完璧なサービス」を狙うより、小さく作り、人々の意見を反映しながらブラッシュアップするアプローチが有効。関氏の「4P(People, Prototyping, Project, Promote)」理論が象徴的。
- 市民との接点を増やす:いくら企業やコミュニティが盛り上がっても、市民目線を外しては長続きしない。だからこそハッカソンやワークショップ、学生インターンなど、いろんな年代・属性の人たちを巻き込む工夫が重要。
- 北九州の“巻き込まれやすさ”:「人と人の距離が近い」「企業・大学・市役所が連動しやすい」という北九州の空気感が、さまざまな試みを後押ししているという指摘が相次いだ。互いに声をかけ合い、オープンに協力しようとする姿勢が、地域課題を解決へ導く土台になる。
全体を通して感じたこと──「この街なら、何か起こせる」
まちづくりやスポーツ振興、DXやGXへの取り組みなど、北九州では様々なステークホルダーが既に動き出しており、新参者やアイターン組を温かく迎えてくれる土壌があるように見えます。
登壇者の言葉にも何度となく「人を巻き込みやすい」「コミュニティが連携しやすい」といったフレーズが登場しました。これはきっと北九州ならではの強みであり、地域課題の解決にテクノロジーを活用したい、社会に貢献したいと考える人材にとっては大きなアドバンテージではないでしょうか。
加えて、「エンジニアが開発スキルだけでなく、コミュニケーションや業務知識を兼ね備える」「企業や自治体と連携して実際に使われるサービスを育てる」といった提案は、北九州に限らず全国で通用する考え方です。まさにオープンな文化と巻き込み力がある街だからこそ、こうした取り組みがリアルに展開されているのだと感じます。
北九州は「鉄の街」から「人が動かすデジタルの街」へ、さらなる進化を遂げようとしているのかもしれません。テクノロジーを学ぶ学生や、スキルを活かしたいエンジニア、そして“地域課題をどうにかしたい”と熱意を抱く人すべてにとって、新たなチャンスが広がる場所と言えるでしょう。
最後に──地域を変えるのは、私たち一人ひとり
今回のイベントは、エンジニアの成長や企業の事業展開だけでなく、地域社会の課題にどう取り組むかを立体的に描き出しました。
自治体も企業もコミュニティも、各所で実験的なコラボを始め、独自のイノベーションを模索している北九州。
登壇者全員が繰り返し語ったように、「まずは人と人が出会い、話し、共に未来を想像する」ことがすべてのスタートラインになっています。
シビックテックに関心がある人は、Code for Kitakyushuなどコミュニティの扉を叩くのが近道。企業サイドでDXやGXの可能性を知りたいなら、地域のDX推進コンソーシアムや行政の相談窓口を活用するといいでしょう。
いずれにしても、「地域課題をみんなで解決しよう」という意欲を持った人を北九州は歓迎し、サポートしてくれる空気があると感じました。
あなたがもし「技術を活かして社会に貢献したい」「エンジニアとしてもっと成長したい」などの想いを持つなら、北九州でのチャレンジは大きな一歩を踏み出す絶好の機会かもしれません。
今回の「地域を変えるテクノロジーの活用事例ー北九州の地域課題に挑むリーダーと考える『地域社会×デジタル活用』」は、そんな北九州の今をリアルに映し出す、熱量あふれるイベントでした。
すでにDay1が開催されており、今回のイベントはDay2として開催。最終のDay3も予定されているようなので、興味を持った方はぜひフォローして続報を追ってみてください。
地域とテクノロジーの交差点にこそ、新しい発見と未来が待っているのだと思います。
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