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【イベントレポート】AI駆動開発 ツール活用事例に学ぶ新たな開発手法の可能性
公開
2025-02-08
文章量
約3651字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
目次
はじめに
1. Locofy.ai による AI 駆動 エンタープライズフロントエンド開発実践 (FPT ジャパン / 鈴木 章太郎さん)
概要とポイント
具体例・デモ
まとめ
2. MCP as a Langage :Roo-Cline を用いたAI駆動フルオート開発(仮) (Makiさん)
概要とポイント
技術構成の詳細
ソーセージ(Sausage)パッケージ
まとめ
3. カスタムインストラクションでGitHub Copilotをカスタマイズ!〜GitHub Copilotの最新アップデートを添えて〜 (日本マイクロソフト / 土田 純平さん)
最新アップデートの紹介
カスタムインストラクションとは
デモと質疑応答
まとめ
総括・クロージング
はじめに
本イベントでは、昨今の生成AI・LLM(Large Language Model)の普及に伴い、ソフトウェア開発全体が大きく変化している現状を踏まえ、実際にAIツールを開発に取り入れて成果を上げている方々が具体的な活用事例を紹介しました。
単なるコーディング支援にとどまらず、設計・運用・テストケース作成・テスト実施など、幅広い工程でのAI活用が進んでいることがわかる内容となりました。
1. Locofy.ai による AI 駆動 エンタープライズフロントエンド開発実践 (FPT ジャパン / 鈴木 章太郎さん)
概要とポイント
- エンタープライズ向けアプリケーションのフロントエンド開発にAIを活用する事例を紹介。
- Locofy.aiを中心に、Figmaなどのデザインツールから自動的にReactコードを生成する仕組みを詳説。
- フロントエンド開発における課題として、デザイナーとエンジニア間でのコミュニケーション・合意形成に時間がかかる点などを指摘。
- 「Large Design Model (LDM)」のコンセプトを紹介。LLM(言語モデル)単体ではなく、デザイン専門知識を学習したラージデザインモデルを用いることで、ピクセルパーフェクトに近い正確な自動コード生成を実現する仕組みを解説。
- 既存のフロントエンド自動化ツール(V0、Bubble、Wizard、Figma AIなど)との比較にも触れ、Locofy.aiの特徴である企業規模のデザイン管理やバックエンド連携のしやすさを強調。
具体例・デモ
- 実際にFigma上のデザインをLocofy.aiに取り込み、要素にタグ付けしながらReactコード化するデモ。
- 生成されたコードをVSCodeにインポートし、最小限の修正で動作可能な状態になるまでが短時間で完結する様子を紹介。
- LDMとLLMを組み合わせることで、フロントエンドとバックエンド双方を素早くカバーできる可能性に言及。
まとめ
- エンタープライズ規模のUI/UXが求められるプロジェクトでも、AIを活用することでデザイナーとエンジニア双方の作業効率を大幅に向上できる。
- 「デザイン→コード」の自動変換フローが、より実践的な段階に来ていることを実感できる内容だった。
2. MCP as a Langage :Roo-Cline を用いたAI駆動フルオート開発(仮) (Makiさん)
概要とポイント
- 開発環境自体を丸ごとAI駆動前提で構築し、フルオートに近い形でソフトウェア開発を回すための実践事例を紹介。
- MCP(Makiさん流の「AI駆動開発プロセス」の呼称)を例に、「Roo-Cline」や独自OSS(アマテラス、LightLLM、Langfuse、code-serverなど)を組み合わせる方法を解説。
- Docker ComposeやTerraformを駆使し、企業内ネットワークでAIツールを無料もしくは低コストで使える環境を構築するポイントに言及。
技術構成の詳細
- アマテラス:生成AIに必要なツール群をAWS上で一括デプロイするOSSプラットフォーム。
- LightLLM:複数の無料モデルやAPIキーを集約し、レートリミットを分散できる仕組み。
- Langfuse:プロンプト履歴やコストの管理ができるダッシュボード。
- code-server (コーダー):VSCodeをブラウザから利用できるリモート環境。
- これらを組み合わせて、企業内でのセキュリティ要件にも対応しやすい構成を実現。
ソーセージ(Sausage)パッケージ
- リポジトリ内のファイル構造をまるごとAIに理解させるための仕組みとして開発したのが「ソーセージ」。
- 一括でファイル構造と内容をマークダウン化し、AIに読み込ませることでリファクタリングや大規模リポジトリの変更指示を正しく伝えやすくする。
- 無闇にAIが“暴走”して破壊的変更を起こすのを防ぎながら、大量の差分生成を支援する活用例が紹介された。
まとめ
- AIを活用するにはツールを点で導入するだけでは不十分。Makiさんのように、統合的な環境・プラットフォームを準備し、リポジトリ構造や社内ルールをAIに正しく共有する工夫が鍵となる。
- “フルオート”を目指しつつ、人間が承認フェーズを挟む形の実践例が多く、AIと人間の補完関係が今後も重要であることが示唆された。
3. カスタムインストラクションでGitHub Copilotをカスタマイズ!〜GitHub Copilotの最新アップデートを添えて〜 (日本マイクロソフト / 土田 純平さん)
最新アップデートの紹介
- GitHub Copilotに無料プランが登場し、手軽に試せるようになったことを紹介。
- 従来のインラインのコード補完機能に加え、チャット・エディット機能が強化されている点を解説。
- Pull Request(PR)のコードレビューも可能になるなど、GitHubプラットフォーム全体と統合が進んでいる現状を説明。
カスタムインストラクションとは
- 企業やプロジェクト固有のルール、独自ライブラリの使い方などをCopilotが学習しやすくするために、追加のプロンプト(カスタムインストラクション)を与える機能。
- プロジェクトのルート以下に
.github/copilot-instructions.md
ファイルを置いておくだけで、チーム全員のCopilotが追加情報を参照できる。 - たとえば「自社フレームワークのAPI仕様」「レガシークラス名の命名規則」「小さめコミットを切るためのコミットメッセージルール」をカスタムインストラクションで渡す、などが有効。
- ただし、Copilot自体のベース設定(回答のトーンやWebアクセスの可否など)とは競合しない範囲で行う必要がある点に注意。
デモと質疑応答
- Copilotに「自作のプロンプト言語(プロンプティ)」を教え込むデモ。
- MDファイルにまとめた仕様を貼るだけで、Copilotが一気に生成してくれる様子を実演。
- 質問として「カスタムインストラクション内の文字量制限はあるのか?」などが上がったが、公式には上限は明示されておらず、内部で分割管理されているため実用範囲内であれば問題なく動くとのこと。
まとめ
- GitHubというプラットフォーム上のソース管理、PRフロー、レビューなどとAIアシストが密接に統合されている点がCopilotの強み。
- カスタムインストラクションで、組織やプロジェクトの文脈をCopilotに与えやすくなり、**「社内技術ドキュメントの共有」「独自ルールの遵守」**などに効果を発揮。
- さらに、近い将来のテクニカルプレビューとして「GitHub Copilot Workspaces」「GitHub Spark」など0→1、1→改修の両面でAIが支援する開発フローがますます充実する見込み。
総括・クロージング
今回のイベントでは、以下のような大きなキーワードが浮かび上がりました。
- 自動生成の精度向上
- デザインからの自動コード生成やフルオートのリポジトリ改変など、「無駄な打ち合わせや手戻りを減らす」ための実用例が次々と紹介され、AI活用が加速している現状が見えました。
- LLM単体ではなく、専門性を踏まえたモデル・環境づくり
- 通常の言語モデルに加え、デザイン専門モデル(LDM)や、社内独自ルール・プロジェクト構造を組み込む工夫が鍵。AIに対してどのようにコンテキストを提供するかが重要となることが改めて示されました。
- 開発フロー全体での活用
- フロントエンドのみならず、設計、テスト、コードレビュー、CI/CDパイプラインなど、工程のあらゆる段階でAIが補助可能になりつつある。GitHubやインフラ構築ツールとの統合例が増え、「AI駆動」の幅が一段と広がっていると感じられます。
- 人間の承認を挟む柔軟なフロー
- 「フルオート」という言葉が印象的ではあるものの、実際には重要なポイントで人間が確認・承認・修正を行うのが成功の秘訣。暴走や予期せぬ副作用を防ぎつつ、効率を高める形がリアルな落とし所になっている。
今後は、ツール間連携や組織的なナレッジの集約など、より高度な形でのAI駆動開発がスタンダードになると考えられます。
参加者からも「想像以上に実務に落とし込みやすい」「環境構築やガイドラインの整備を参考にしたい」といった声が上がり、開発スタイルの大きな転換点を感じさせるイベントとなりました。
以上が「AI駆動開発 ツール活用事例に学ぶ新たな開発手法の可能性」のイベントレポートです。今後も各ツールのアップデートや事例共有が進むことで、より一層AIとの協働開発が当たり前になる未来が期待できます。
今回の登壇内容をきっかけとして、ぜひ自社・自分の開発環境でもAIを活用した新たな方法を模索してみてはいかがでしょうか。
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