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DX時代の防衛戦略:ゼロトラストを制するセキュリティエンジニアの実践ガイド
公開
2025-02-07
文章量
約3270字
「ゼロトラスト」という言葉が少しずつ当たり前になってきましたが、実際にどういったメリットがあるのか、そして現場のセキュリティエンジニアがどのように動けばいいのか、まだ手探りの方も多いのではないでしょうか。
私自身も最初は「ネットワークの境界をなくす? それ、本当に実現できるの?」と疑問でした。
しかし、DX時代に必要な防衛戦略としてゼロトラストの考え方は欠かせないものになっています。
この記事では、セキュリティエンジニアとして押さえておきたいゼロトラストの基本から、導入を成功させるための実践的なステップ、さらにキャリアアップにつながるポイントをまとめてみました。

ゼロトラストの基本概念
ゼロトラストの核心は、「すべての通信を常に検証せよ」という考え方です。
従来の境界型セキュリティでは「社内ネットワーク=安全、外部ネットワーク=危険」という構図でした。
しかし、クラウド環境やリモートワークが進み、どこまでが“社内”でどこからが“外部”なのか曖昧になっています。
そこで注目されているのが、常にユーザーやデバイスを検証し、最小限のアクセス権限のみを付与するというゼロトラストの考え方です。
境界型セキュリティの限界
- リモートワークの増加:社員がVPNで接続するだけならまだしも、各種クラウドサービスへの直接アクセスも増えています。境界を守るだけでは、すべての通信をコントロールしきれません。
- IoTやモバイルデバイスの普及:個人所有のスマートフォンやタブレットが業務に利用されることも当たり前となりました。これらの多様なデバイスを「社内ネットワーク」でひとまとめにするのは不可能です。
これらの事情から、今や「疑わしきは全て検証する」ゼロトラストモデルの導入が、セキュリティエンジニアにとって大きなテーマになっているのです。
ゼロトラスト導入のメリットと課題
ゼロトラストを導入すれば、すべての通信を逐一検証します。これは一見すると手間が増えるように思えますが、セキュリティレベルを大幅に向上させられる利点があります。
メリット
- 高いセキュリティレベル:攻撃者が1台の端末を乗っ取っても、他のシステムやネットワークに横展開されにくい仕組みが作れます。
- 可視化の向上:ゼロトラスト環境では、アクセスするユーザーやデバイスが常にモニターされます。その結果、どのユーザーがいつ、どのリソースにアクセスしているかが把握しやすくなります。
- 柔軟なリモートワークへの対応:アクセスする場所やデバイスを問わずに、必要なリソースにだけアクセスを許可する設計が実現しやすくなります。
課題
- 設計・運用コスト:全てのアクセス制御を細かく設計し、日々運用していくにはコストや工数がかかります。一度導入して終わりではなく、継続的なアップデートが必要です。
- ユーザー体験への影響:アクセス時に都度認証を求められたり、制約がかかるためにユーザーの負担が増えることもあります。特にリモートワークがメインとなっている組織では、認証フローを工夫しないと生産性に影響が出る場合があります。
- レガシーシステムとの共存:企業によっては長年使い続けているシステムがあり、それがゼロトラストに適合しないことも少なくありません。その場合、段階的な移行や代替策の検討が必要です。
ゼロトラストを制するセキュリティエンジニアの実践ステップ
ゼロトラスト導入を成功させるためには、セキュリティエンジニアの的確なプランニングとチーム内外とのコミュニケーションが欠かせません。ここでは、具体的なステップをざっくりと紹介します。
1. 現状評価とゴール設定
まずは自社のネットワーク構成や業務フローを洗い出し、どの部分が脆弱なのかを明確にしましょう。
ここでは、アセットの棚卸しやアクセスログの分析が大事になります。
そのうえで、「最終的にどのような姿を目指すのか」を関係部署と共有し、明確なゴールを設定してください。
2. ポリシー設計と権限管理
次に、アクセス制御ポリシーを設計します。
ユーザーやデバイス、アプリケーションごとに最小権限の原則を適用し、「業務に必要な最小限のリソースだけにアクセスできる」状態を目指します。
この段階で大切なのは、運用を想定したポリシーの粒度です。
細かくしすぎると管理負荷が上がり、粗すぎるとセキュリティが脆弱になります。
3. テクノロジーの選定と導入
ゼロトラストを実現するには、IAM(Identity and Access Management) や エンドポイントセキュリティ、MDM(Mobile Device Management)などの技術要素が必要になります。
さらに近年は、SASE(Secure Access Service Edge) という考え方も注目を集めています。
自社の環境と要件に合ったソリューションを導入し、なるべくシンプルな構成を心がけましょう。
4. 運用と継続的な監査
システムやツールを導入して終わりではありません。実際に運用を回しながら、定期的に監査やログ分析を行い、ポリシーの改善やツールのアップデートを行うことが重要です。
ここで常に疑問を持つ姿勢が、ゼロトラストを円滑に機能させる鍵となります。
5. エンドユーザーとのコミュニケーション
ゼロトラストではアクセス制限や追加の認証ステップが頻繁に求められます。
そのため、エンドユーザーとのコミュニケーションが疎かになると、「なんか面倒くさいシステムだな」と敬遠されかねません。運用マニュアルの整備や定期的な勉強会の実施など、セキュリティエンジニアが積極的に働きかけることで、ユーザーにもメリットを感じてもらえるようにしましょう。
DX時代におけるセキュリティエンジニアのキャリア展望
ゼロトラストをはじめとする新しいセキュリティ概念を理解し、導入・運用をリードできるエンジニアは、今後ますます需要が高まります。
DXが進むほど、企業はクラウドやAIなど様々な領域のセキュリティを再構築しなければなりません。その際、ゼロトラストを熟知したセキュリティエンジニアがチームの中心となるでしょう。
- マルチクラウド環境での活躍:複数のクラウドサービスを利用する企業が増えているため、クラウドセキュリティの専門知識はますます求められます。
- DevSecOpsの実践:セキュリティを開発プロセスの最初から組み込む動き(DevSecOps)が盛んです。セキュリティエンジニアが開発チームと協力し、安全なアプリケーションをスピーディーに構築していくことが期待されています。
- コンサルティング能力の重要性:技術だけでなく、経営層や他部署へのプレゼンテーション、リスク評価、コスト計算など、ビジネス視点でのコンサルティングスキルも求められます。
将来的には、サイバーセキュリティのスペシャリストだけでなく、ビジネス全体を俯瞰できるCISO(Chief Information Security Officer)としてキャリアアップする道もあります。
まとめ
ゼロトラストは単なるセキュリティの流行語ではなく、DX時代における根本的な防衛戦略として今後も注目され続けるでしょう。
セキュリティエンジニアがこの考え方を身につけ、実際のシステムに落とし込むことで、企業の安全性だけでなく柔軟な働き方やイノベーションを支える礎となれます。
技術的な学習だけでなく、運用やユーザー教育、ビジネス視点も含めて幅広いスキルを磨くことが、今後のキャリアに大いに役立つはずです。
あなた自身の経験や課題意識を踏まえつつ、ぜひゼロトラスト導入の一歩を踏み出してみてください。
「常に疑い、常に検証し、最小限だけ許可する」—この原則を守ることで、DX時代のセキュリティを堅牢にしつつも、組織やユーザーの成長を力強くサポートできるはずです。
新しい技術を取り入れるときは大変なこともありますが、その先には大きなやりがいや自己成長が待っています。セキュリティエンジニアとして、ぜひチャレンジしてみましょう!
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