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アナリティクスエンジニアが身につけるべき技術スタック:データ基盤構築からBI活用まで
公開
2025-02-14
文章量
約4280字

imofessional
Webサービスを提供する日系企業でアナリティクスエンジニア(AE)/ データエンジニア(DE)をやっています!
近年、データ活用の重要性が増すにつれ「アナリティクスエンジニア」という職種に注目が集まっています。データエンジニアやBIエンジニア、データアナリストといった既存の役割とどう異なるのか、そしてどのような技術スタックが必要なのかを理解することは、これからキャリアを築いていく上で重要です。本記事では、アナリティクスエンジニアに求められる技術スタックを「データ基盤構築」と「BI活用」の2つの側面から解説し、さらにメタデータ管理やガバナンスの観点も含めてまとめます。
アナリティクスエンジニアとは
アナリティクスエンジニアの役割
アナリティクスエンジニアは、データの収集・変換・蓄積からビジネスインサイトの創出をスムーズに実行できるようにする“橋渡し”的な存在です。具体的には以下のような業務を担当します。
データのETL/ELTパイプラインの設計・実装
クラウド上のデータウェアハウスやデータレイクの最適化
BIツールを活用したダッシュボードの構築・運用
データ品質やセキュリティを考慮したメタデータ管理・ガバナンス
ビジネスサイドが求めるアドホックなデータ抽出への対応
他の職種との違い
データエンジニア: データパイプラインの構築や運用面に強みを持ちます。一方、アナリティクスエンジニアはビジネスに寄り添い、BIツールや分析環境を整備する役割が大きいです。
BIエンジニア: BIツールを使ったレポーティングやダッシュボード構築に特化します。アナリティクスエンジニアは、BIエンジニアの前工程としてデータモデルやETL/ELTプロセスを整備する点が異なります。
データアナリスト: 分析や可視化の観点が強い職種です。アナリティクスエンジニアはデータアナリストが分析しやすい環境を作ることにフォーカスします。とはいえアナリティクスエンジニアとデータアナリストは役割が一部重複します。
データ基盤構築に必要な技術スタック
ETL/ELTツール:ex) dbt, Dataform
アナリティクスエンジニアがまず把握すべきは、データの変換処理を自動化するツールです。代表的なものにdbt (data build tool) やDataformがあります。多くの場合、すでに何かしらのツールが導入されている現場に参画することになると思うので、現場で利用されているETL/ELTツールに明るくなっておくことは重要です。逆に導入するタイミングに居合わせた場合はメリットデメリットを考慮しながら技術選定することになるでしょう。
dbt (data build tool) データモデルのバージョン管理やテストの仕組みを備えており、SQLベースで手軽にデータ変換ロジックを定義できるのが特徴です。モデルが増えても管理しやすく、データ品質の向上が期待できます。
Dataform dbtに類似したデータ変換ツールで、Google Cloudと親和性の高いサービスです。フローチャートベースでパイプラインを可視化できるなど、開発者にとって理解しやすいUIが特長です。
クラウドデータウェアハウス:ex) BigQuery、Snowflake
データを分析に利用するための中心的な役割を担うのがクラウドデータウェアハウスです。代表例としてBigQueryやSnowflakeがあります。こちらもETLツールと同様ですでに何らかのDWHが導入されているところに参画することになると思うので、現場に合わせて習熟する必要があります。
BigQuery Google CloudのサーバーレスなDWHサービスで、大規模データの分析を高速かつスケーラブルに実行できます。SQLで操作できるため習得が容易で、Dataformやdbtとも高い親和性を持ちます。
Snowflake マルチクラウド対応が特長で、AWS、Azure、GCPいずれでも同様のユーザー体験を得られます。ストレージとコンピューティングが完全分離しており、必要な時だけリソースを消費できるのでコストを最適化しやすいです。
BI活用に必要な技術スタック
BIツール:ex) Looker、Tableau、Looker Studio、Power BI
アナリティクスエンジニアにとってBI構築スキルは、単なるデータの可視化だけでなく、データの統合、品質管理、モデリング、最適化、そしてビジネス上の意思決定を支えるための重要なスキルです。企業が効果的にデータを活用し、競争力を高めるために、アナリティクスエンジニアはBI構築において中心的な役割を果たすことが多いです。そのため、現場で導入されているBIツールやまだ導入されていない場合は現場の状況に即したツールについて習熟していく必要があります。ここではLooker、Tableau、Looker Studioに絞ってざっくりした特徴を紹介します。
Looker
特徴:
データモデル重視: Lookerは、LookMLという独自のデータモデリング言語を使って、データモデルを事前に定義しておくことで、レポートやダッシュボードを一貫性のある形で作成できます。
データ統合とガバナンス: 複数のデータソース(クラウド、オンプレミスなど)と統合でき、データのガバナンスが強化されています。
データ探索機能: ユーザーは複雑なSQLクエリを知らなくても、直感的にデータを探索できます。
企業向け: 特にエンタープライズ向けに強力でスケーラブルな機能を提供しています。
インタラクティブなダッシュボード: データに基づいたインタラクティブなダッシュボードを提供。
利用シーン: 複雑なデータ構造を持つ企業や、大規模なデータガバナンスと一貫性のあるレポート作成が必要な場合に適しています。
Tableau
特徴:
直感的なドラッグ&ドロップインターフェース: 非技術者でも簡単に操作できるGUIを提供。データの可視化や分析を非常に直感的に行えます。
データ可視化の多様性: さまざまな種類のチャートやダッシュボードを簡単に作成できるため、視覚的にデータを表現するのが得意です。
リアルタイムのデータ接続: 複数のデータソース(クラウド、データベース、スプレッドシートなど)にリアルタイムで接続可能です。
データの即時分析: 高度なデータのドリルダウンや即時の分析機能を提供。
カスタマイズ性: 高度なカスタマイズが可能で、ビジュアル的な表現力が非常に豊富。
利用シーン: 直感的な操作で素早くデータを可視化したい場合や、データの深堀りをリアルタイムで行いたい場合に向いていそうです。
Looker Studio
特徴:
無料で使える: Looker Studioは、基本的な機能が無料で提供されるため、コスト面でのメリットがあります。
Googleエコシステムとの統合: Google Analytics、Google Ads、BigQuery、Google Sheetsなど、Googleの各種サービスとの連携が強力です。
シンプルなインターフェース: 他のツールに比べてシンプルで、誰でもすぐに使えるようなインターフェースが特徴。
データのビジュアライズ: 基本的なグラフやダッシュボードの作成が簡単で、簡単に共有可能なレポートを作成できます。
クラウドベース: クラウド上で動作するため、データの共有やコラボレーションが容易です。
利用シーン: 少規模のプロジェクトや、Googleサービスを多く利用している企業、予算を抑えつつデータを可視化したい場合に便利です。
データ可視化とダッシュボード設計
アナリティクスエンジニアは、ダッシュボードを最終的に活用するユーザー(データアナリストやビジネス部門)にとって「見やすく・使いやすい」可視化を提供する必要があります。以下の点を意識すると、BI活用の価値が高まります。
目的に合ったチャートの選定 時系列なら折れ線グラフ、カテゴリ比較なら棒グラフなど、見る人が最短で理解できるようにします。
ダッシュボードの構成 上から重要な指標を配置し、詳細に向かう構成(ドリルダウン構造)を意識します。
アクセスや更新頻度の設計 ほぼリアルタイムでモニタリングが必要な指標と、週次・月次で十分な指標を分けて表示し、リソースを無駄にしないようにします。
メタデータ管理とガバナンス
データ量が増え、分析者やステークホルダーが増加するほど、メタデータ管理やガバナンスの重要性が高まります。アナリティクスエンジニアとしては、以下の点を押さえておくとよいでしょう。
メタデータ管理ツールの活用 データ辞書、データリネージュ、バージョン管理などを一元的に把握できるツールの導入を検討します。dbtやDataformでも、依存関係やドキュメント自動生成機能を活用できます。
データ品質向上のプロセス ユニットテストやリグレッションテストを定期的に実行し、データの整合性を担保します。dbt testの定期実行とモニタリングなども有効かもしれません。また組織によってはデータコントラクトなども考えると良いでしょう。
セキュリティと権限設定 DWHやBIツールでユーザーごとのアクセス範囲を明確にするだけでなく、データマスクやカラムレベルの権限管理なども検討が必要です。
ガバナンス体制の構築 組織としてどこまでデータを公開するのか、どのように承認フローを設けるのかなど、ルール作りが不可欠です。アナリティクスエンジニアは技術面でのサポートと、運用ルールの提案を行います。
まとめ
アナリティクスエンジニアが身につけるべき技術スタックは、「データ基盤の構築」と「BI活用」という両面にまたがります。dbtやDataformを使ったETL/ELTの自動化、BigQueryやSnowflakeのクラウドDWHの選定・運用、Lookerを代表とするBIツールでの可視化とダッシュボード構築など、多岐にわたるスキルが求められます。さらに、メタデータ管理やガバナンスを意識することで、組織としてのデータ活用レベルを大きく向上させることができます。
これからアナリティクスエンジニアとしてキャリアを築きたい方、あるいは既にデータエンジニアやBIエンジニア、データアナリストとして活躍しながら業務領域を広げたい方は、ぜひ本記事で紹介した技術スタックをベースに学習・実践を進めてみてください。組織のビジネス価値を最大化するための要となるアナリティクスエンジニアが、今後ますます重要な存在になるに違いないと筆者は考えています。