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スケーラブルなバックエンド構築術とマイクロサービスアーキテクチャのベストプラクティス
公開
2025-02-10
文章量
約2648字

Yard 編集部
Yardの編集部が、テック業界の最新トレンドや知見について発信します。
みなさん、こんにちは。
バックエンドエンジニアとして日々システム運用や開発をしていると、「サービスを柔軟に拡張できる仕組み」が欲しくなることはありませんか?
そんなときに注目されるのが、マイクロサービスアーキテクチャです。
最近では大規模なWebサービスやSNS、ECサイトなどで採用されることが増え、業界をリードする多くの企業がすでに導入しています。
本記事では、スケーラブルなバックエンドを構築する上での技術選定と、その具体的なポイントを解説します。
マイクロサービスアーキテクチャとは?
マイクロサービスアーキテクチャは、サービスを小さなコンポーネントに分割し、それぞれを独立して開発・運用する考え方です。
従来のモノリシックアプリケーションとは異なり、各機能が独立しているため、障害が起きても他の機能に影響しにくいのが特徴です。
また、必要に応じて個別にスケールさせることができるため、サービスが急激に成長したり、季節ごとのアクセスが集中したりしても柔軟に対応ができます。
一方で、コンポーネント間の通信やデータ整合性を保つために追加の仕組みが必要となり、運用・監視も複雑になるというデメリットも無視できません。開発チームが大人数の場合や、機能追加・変更が頻繁にあるサービスで特にメリットが大きいアプローチだと言えます。
マイクロサービス導入のメリット・デメリット
メリット
- スケーラビリティ:ボトルネックになっている部分だけを重点的にスケールアウト(インスタンス増強)できる。
- 独立開発:各サービスが疎結合のため、チームごとに開発言語やフレームワークを選択でき、デプロイも自由度が高い。
- 高い可用性:一部のマイクロサービスがダウンしても、他の機能は影響を受けずに稼働し続けられる。
- 継続的デリバリーが容易:コンポーネント単位でのリリースが可能なので、CI/CDパイプラインとの相性が良い。
デメリット
- 運用の複雑化:マイクロサービスが増えるほど、監視対象や障害分析は複雑になる。ログの一元管理やトレースが必須。
- 通信コスト:サービス間通信が増えることでネットワーク負荷やレイテンシが上がる可能性がある。
- データ整合性の担保:サービスごとにデータストアを分割する場合、トランザクション管理に気を配る必要がある。
- 学習コスト:新しいテクノロジーやツールが多数登場するため、チーム内の知識共有が大事。
技術選定のポイント
コンテナによるデプロイ
マイクロサービスを導入するなら、まずはコンテナ技術(Dockerなど)を検討しましょう。
コンテナは、サービスごとに異なるライブラリや言語バージョンを使う際にも環境を切り分けやすく、依存関係の衝突を避けられます。
さらに、Kubernetesなどのオーケストレーションツールを組み合わせれば、コンテナの自動スケーリングやロールアウト、ロールバックがスムーズになります。
APIゲートウェイの活用
マイクロサービス化すると、多数のエンドポイントが乱立しがちです。そこで、APIゲートウェイを導入しておくと、各サービスを統合的に管理できます。
ルーティング、ロードバランシング、認証・認可の一元化、レートリミットなどの機能をAPIゲートウェイ側に集約することで、サービス自体の実装をシンプルに保ちやすいです。
データベースの分割戦略
モノリシックなサービスからの移行を考えるときに悩ましいのが、データベース周りの構造変更です。
マイクロサービスの基本方針として、各コンポーネントが独自のデータストアを持つのが理想とされています。
しかし、実際には移行コストや整合性の問題も大きいため、まずはテーブル単位で分割したり、サービスによって異なるデータベースを選ぶことから始めるのが現実的です。
たとえば、顧客情報はRDBで管理しつつ、ログのような大量データはNoSQLや時系列データベースに切り出す、といった使い分けが有効です。
モニタリングとオブザーバビリティ
サービスが細分化される分、「どこで何が起きているのか」を素早く把握する仕組みが欠かせません。
分散トレーシングや集中ログ管理、メトリクス収集(Prometheusなど)を活用して、異常が発生した際に即座に問題箇所を特定できるようにしましょう。
監視対象が増える分だけ、ダッシュボードの設計やアラートの閾値設定などにも工夫が必要です。
マイクロサービス導入のステップ
- モノリシックからの切り出し計画:既存サービスをまるごと分割するのではなく、まずは特定の機能やボトルネック部分からマイクロサービス化を進めます。
- APIゲートウェイやサービスディスカバリの導入:環境構築の段階でAPIゲートウェイやサービスディスカバリ(ConsulやEurekaなど)を設定し、サービス間通信の土台を作ります。
- コンテナ化とオーケストレーション:各サービスをDocker化し、KubernetesやAmazon ECSなどで管理することで、自動スケールや自己修復を実現します。
- CI/CDパイプラインの整備:マイクロサービスは頻繁にリリースが行われるケースが多いため、テストやデプロイを自動化して開発速度を落とさないようにします。
- 運用監視とフィードバックループ:運用開始後は、メトリクス収集や分散トレーシングなどを活用し、問題を早期に検知・改善するサイクルを回します。
まとめ
マイクロサービスアーキテクチャは非常に柔軟でスケーラブルなバックエンドを作り上げる上で大きな恩恵をもたらします。
ですが、その分だけ運用・監視コストや学習コストが高くなるという課題も存在します。チーム体制やプロダクトの成長フェーズを見極めた上で、段階的に導入を進めることが重要です。
とはいえ、今後もサービスを拡張し続ける見込みがあるなら、マイクロサービスアーキテクチャは一度検討する価値があります。「小さく始めて、大きく育てる」という姿勢で、まずは一部機能からスモールスタートを切ってみてください。
必要なところだけを独立させることで、サービス全体の開発効率や可用性を向上させるきっかけになり得ます。
バックエンドエンジニアとしては、コンテナ技術やAPIゲートウェイ、分散トレーシングといった関連ツールを学ぶことでスキルの幅が広がります。新しい技術との付き合い方やチーム内での知識共有を意識して、ぜひ充実したマイクロサービス開発の旅を楽しんでください。人と技術の両面で、サービスがどんどん成長していく手応えを味わえるはずです。
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