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クラウドネイティブ組織を成功に導く方法:インフラエンジニアが解説する理想的DevOps体制
公開
2025-02-09
文章量
約3666字

Yard 編集部
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こんにちは、Yard編集部です。
私は、オンプレ時代にエンジニアのキャリアをスタートさせ、クラウド移行のプロジェクトを経て、現在、マルチクラウドを活用したシステム開発・運用をしています。
クラウドネイティブが当たり前になった今、本当に強い組織を作るには「ただクラウド上でアプリケーションを動かすだけ」では不十分だと痛感しています。
そこで本記事では、インフラエンジニア・SRE、あるいはそれを目指す方に向けて、理想的なDevOps体制を作り上げるためのポイントを解説していきます。
組織全体でクラウドネイティブを活かしきるためには何が必要なのか、ぜひ一緒に考えてみましょう。
クラウドネイティブ組織とは何か
クラウドネイティブという言葉はよく耳にしますが、実際のところ「クラウドでアプリを動かす」以上の意味合いがあります。クラウドネイティブ組織とは、
- クラウドの特徴を最大限に活かす
- インフラ、アプリケーション開発、運用の垣根をなるべく取り払い小さなチームで素早く動ける
- 組織としてアジリティを発揮するための文化や技術的プラクティスを整備する
といった考え方を根底に据えた企業やプロジェクトを指します。クラウドネイティブの真髄は、「技術選択の自由度が高まった状態でいかに早く価値をリリースするか」にあります。
そのためには、チームの境界をなくし、サービスの機能追加やインフラ改修を軽量かつ高速に回していく必要があります。
DevOpsが重要な理由
クラウドネイティブ組織を語るうえで、DevOpsというキーワードは切り離せません。
なぜなら、開発(Dev)と運用(Ops)が一体となってサービスを支える体制が、クラウドの恩恵をフルに受けるための近道だからです。
大事なポイントは次のようなものが挙げられます。
- リリースサイクルの高速化: 開発者と運用担当が密に連携し、自動化・標準化を進めることで、リリースまでのリードタイムを大幅に短縮できる。
- システムの安定運用と改善: インフラエンジニアやSREが常時モニタリングし、異常検知・自動復旧の仕組みを整えることで、信頼性と可用性を確保しながら継続的な改善が可能になる。
- 組織的な学習効果: 従来のような「開発だけ」「インフラだけ」という分断を取り払うことで、相互にナレッジを共有しあい、トラブルシュートや新しい技術導入がスムーズになる。
これらを実現するうえでは、ツールの導入以上に組織や文化を変える取り組みが求められます。
クラウドネイティブ組織に欠かせない文化
ツールや技術スタックを最新にしても、それを活かす組織文化がなければ意味がありません。具体的には、以下のような文化がクラウドネイティブ組織には不可欠です。
- 失敗を許容し、学習に変える:クラウドの利点のひとつは、環境を素早く用意でき、トライアル&エラーを繰り返しやすい点です。ただし、メンバーが「失敗してはいけない」と思い込み、リスクを避けるようでは学習速度が落ちます。失敗を早期に発見し、学習に転換する土壌を作ることが重要です。
- 情報共有の徹底:リモートワークの普及や開発拠点の分散により、情報のサイロ化は大きな課題です。SlackやConfluenceなどのツールを使い、ノウハウを意識的に共有する仕組みを整えることで、無駄な重複作業やトラブルの再発を減らせます。
- 自動化への前向きな姿勢:繰り返しが多い手作業は、自動化で省力化し、ミスを減らすのが最善です。自動化を嫌がる組織では、ひたすらマニュアル作業が増え、結果的にサービスの改善に割けるリソースが減ってしまいます。
理想的なDevOpsチームの構成
実際にクラウドネイティブ組織を作るとき、どんなチーム構成が望ましいのでしょうか。私がいろいろな現場を見てきた中では、次のような役割があるとスムーズに進みやすいと感じています。
- DevOpsエンジニア (もしくはSRE)
- 継続的インテグレーション(CI)や継続的デリバリー(CD)の環境整備
- インフラコード(IaC)の管理と最適化
- 監視・ロギング・アラートの仕組みづくり
- アプリケーション開発エンジニア
- サービスの新機能開発、バグ修正
- DevOpsエンジニアとの連携によるパイプライン管理
- クラウドネイティブのプラクティスを活かしたアーキテクチャ設計
- プロダクトマネージャー or チームリーダー
- 全体のロードマップ策定と優先度づけ
- リリーススケジュールの調整やステークホルダーとのやりとり
- チーム間のコラボレーション促進
小規模な組織であれば、これらの役割を兼任することもあります。
重要なのは、インフラとアプリ開発の境界があいまいになり、チームとして「サービスを育てる」意識を共有できるかどうかです。
推奨ツールとテクノロジー
クラウドネイティブを支える具体的なテクノロジーは数え切れないほどありますが、ここでは代表的なものをいくつか紹介します。
もちろんツールの導入がゴールではなく、適切に使いこなすためのノウハウ共有がセットで必要です。
- コンテナ技術 (Docker, Podman):コンテナ化することで、環境差異を最小化し、スケールアウトを容易にする。
- コンテナオーケストレーション (Kubernetes, ECS, etc.):大規模運用やマイクロサービス化には、Kubernetesなどのオーケストレーションツールが事実上の標準。
- IaC (Infrastructure as Code) ツール (Terraform, CloudFormation, Ansible など):手動でのインフラ構築ミスを防ぎ、再現性・変更管理を容易にする。
- 継続的インテグレーション/継続的デリバリー (GitHub Actions, Jenkins, CircleCI など):変更を小刻みにリリースし、素早くフィードバックを得るための生命線。
- 監視・ロギング (Prometheus, Grafana, ELK Stack など):信頼性や可用性を確保するために、可視化とアラートは必須。
これらを扱う際には、単にセットアップするだけでなく、運用時に何が起きるかを想定して設計し、チームで共有することが大切です。
移行の際にぶつかる課題とその対策
クラウドネイティブへの移行は、決して楽な道のりではありません。現場では次のような課題に直面することが多いです。
- 既存システムとの共存:いきなりオンプレ環境を全て捨てるわけにはいかない場合、ハイブリッドクラウド構成や段階的移行が必要です。ここではネットワーク接続の最適化や既存システムとのインターフェース設計が大きなポイントになります。
- 組織の抵抗:文化やプロセスを変えるのは想像以上に大変です。特に大企業では、「何年も慣れ親しんだやり方を変えたくない」人が多いかもしれません。この抵抗を少しずつ解消するには、小さな成功事例を積み重ねてチーム内で共有し、メリットを実感してもらうことが効果的です。
- セキュリティとガバナンスの確保:素早いリリースサイクルを回す一方で、セキュリティを軽視してしまうと大きな事故につながります。DevSecOpsというキーワードもよく聞きますが、ツールによるセキュリティスキャンや脆弱性検知をCIパイプラインに組み込み、常時モニタリングを実施するのが理想的です。
成功の鍵はチームが学習し続けること
最終的に、クラウドネイティブ組織の成否を決めるのは、**「どれだけ継続的に学習を続けられるか」**にかかっています。技術の進化が速いクラウドの世界では、3年前のベストプラクティスが今日の足かせになることも珍しくありません。新しいサービスやフレームワークがどんどん登場する中で、チーム全体が常に知識をアップデートできる仕組みが必要です。
- 社内勉強会やコミュニティへの参加
- 共有ドキュメントを定期的に見直してアップデート
- 書籍やオンラインコースの活用
このような活動を通じて、常に最新の情報を取り入れ、最適なアーキテクチャや開発プロセスを試行錯誤する姿勢が重要になります。
まとめ
クラウドネイティブ組織を築いて理想的なDevOps体制を実現するには、単にツールを導入したり「クラウドで動かす」だけでは足りません。
「文化」「技術」「チーム構成」の三位一体で取り組むことが求められます。
- 小さく試して素早く失敗し、学びを得る文化
- 開発と運用の垣根をなくすチーム編成
- 継続的に学習し続ける姿勢
これらを大切にしながら、クラウドネイティブの可能性を最大限に引き出してみてください。エンジニア個人が力を発揮しやすくなるだけでなく、組織としてもより高いアジリティを得られ、ビジネスの成長を加速する原動力となるはずです。
もし何か悩みや疑問があれば、ぜひコミュニティや勉強会などで相談してみてください。
現場目線での情報交換こそが、クラウドネイティブ時代を生き抜くうえでの最大の武器になります。
あなたの取り組みが、未来のクラウドネイティブ組織をリードする一歩になることを願っています。
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